2018年10月15日(月)
第4回峨山道トレイルラン・後半 [ランニング]
多くの人から、「48kmの徳田までが前半、残り25kmが後半と思え」と言われた。私の想定では、ここまで7時間12分。実際はちょうど1時間ほどの遅れだったが、まあそれも想定内。
このあとの「鉄塔地獄」も、楽しみやねえ。
徳田(48km地点)で16分休けい。
8時間33分もたったのに、まだ昼の1時半ですか。
でも山道で暗くなると厄介なので、進めるだけ進んでおかなくては。
残り25kmを6時間弱ということは、時速4km(キロ15分ペース)ではアウト。真樹に借りたGPS腕時計は、その時々のペースが順次出てくるのでそれが目安になって便利。
さあ始まった、プラ階段の上り下りが連続する「鉄塔地獄」。
でもけっこう走れるところもあって、「全然地獄ちゃうやん」と高をくくっていた。
50km、8時間58分。
徳田からの2kmを25分なら、まあまあやん。
またこれや。
どこを通ってもドボン!
上りのプラ階段はそこそこ進めるのだが、下りがダメ。太ももの前側が異常な痛さ。
同じ人と「上りは抜き下りは抜かれ」の繰り返し。
いっそ上り坂のほうが走りやすい。
もう下りはそうろっとしか歩けない。
55km、10時間05分。
キロ13〜14分かかっているが、これ以上落ちずに最後まで行けたら、まだ制限時間内ゴールは可能。
これか、橋が流されてしまった沢ちゅうのは!
ロープ伝いに細い丸太を進んだが、片足ドボン!
大きなため池がある横も通った。
第6エイド(チェックポイント)、矢駄到着。大きな工場の横。
58km、10時間48分。
ここでライト点灯のチェックがあった。
給水だけして、休けいせずすぐに再スタート。
残り15kmを3時間40分ねえ・・・、計算でけへん。
キロ14分くらいでは行かんとあかんのか。
「てっとう、てっとう、あかいてっとう、くろいてっとう・・・」
前後だれもいないので、歌いながら走る。
こんな山の中に太陽光発電パネルの設置工事。
私らが走っている道は、この会社の私道らしい。
60km、11時間13分。
「てっとう、てっとう、またてっとう・・・」
もうよろしい。
私が数えられた限りで言うと、徳田から20の鉄塔があった。しかし大きさや色や設置場所がそれぞれなので、「地獄」とは感じなかった。
暗くなってきたので、ヘッドランプ点灯。
ところが私のは安もんなので、全然明るくなかった。こんなところケチったらあかんかった。
65km、12時間59分。
ここらあたりはもう真っ暗。
それに加えて、走路の状態も最悪。ヌルヌル、ジャブジャブ、すってんころりん。山側に倒れたからよかったものの、谷側に倒れていたら大けがでした。
1kmに26分かかった区間もあった。さすがにその時は、もう制限時間内ゴールはあきらめた。
でも、「止められない限りは最後まで進む」と心に誓っていた。
最後の暗闇泥道下り坂では1人も抜くことはなく、10人くらいに抜かれたと思う。
第7エイド(チェックポイント)、金丸到着。ここは山を下り切ったところ。
68km、13時間25分(関門閉鎖5分前)。
ここでパパッと計算ができた。
ここから3kmほどは、街中の平坦なアスファルト。休まず走れたらキロ10分ペースで行ける。残り2kmほどがお寺につながる山道らしいが、上りなのでキロ15分ペースで行けるだろう。最後の最後に「私が走れない下り」がほとんどない。
10分×3キロ+15分×2キロ=60分
いやまあ、なんでか知らん5分の余裕をもってゴールできるやん!
ここからうれしくなって、走りに走った。なんとキロ9分ペースで。
あと残り2kmくらいやなあというところに走路員さん。
「ゴールまで、あと3.5kmです。」
「またまた・・・。マラソン大会でも、訳の分からん距離を教える人いるねん」と思いながら進んだら、ガーン!
「70kmの距離表示があるがな。さっきのとこ、ほんまにあと3.5km地点やったんやー! あー!」
金丸(68km地点)からゴールまでは5kmということになっていたが、実際は6km近くあったようだ。
70km、13時間58分。
「残り3kmを32分以内、山道をキロ11分を切るペースで走らなあかん。」
でも走れるだけ走ってみよう。下りでこの足なら絶望的だが、上りはまだ少しは足が動く。とにかく、つづら折りのような暗闇坂を必死に登って行った。
残り1km地点を過ぎたあたりで、ゆっくり進む女性選手(ナンバー27番)に追いついた。
「あと10分あります。がんばったらゴール制限間に合いますよ。」
「そうなんですか。」
そこからしばらくは並走。
丘を越えると、ゴール会場がやっと見えてきた。
「あの明るいところがゴールですよね」と彼女。
「そうですね、もう少しです。」
その途端、彼女はわき目もふらずに下り坂を駆けて行った。わたしゃー太ももがいとうて、よう追いかけん。二人の差はみるみる開いて行った。
明かりが見えていたのはゴール横のおもてなし広場。その前を通り過ぎて、ぐるっと遠回りして折り返してから永光寺山門の下へ。
写真を撮る余裕などもちろんなし。
コースマップの表紙に使われていた写真でご勘弁を。
この階段の手前まで来た時に、「残り40秒」のアナウンス。
「27番」さんが右レーンを使って上っていたので、私は左レーンへ。
最後の力を振り絞り、一気に3分の2あたりまで駆け上がった。すると、ずっと先行していたはずの彼女が10数段を残し止まりかけている。
そのあたりから、「10、9、8、7・・・」
二人同時に階段を昇りつめ、計測器へタッチに。
もちろん彼女が先。「残り1」くらいか。
続く私はほぼヘッドスライディング状態。草野球ではよくベースがいっしょにふっ飛んでいくが、私のスライディングで計測器が飛んだ。
「ギリセーフか1秒遅れか・・・、いや『ピッ』鳴らへんかったぞ。」
どうも汗で滑ったみたい。ベースタッチしてへんヘッドスライディングといっしょやがなー。
やり直したが、時すでに遅し。デジタル計時板は、14時間30分00秒を数秒過ぎていた。
「あーあ。」
(どなたか、あの私のヘッスラタッチの写真撮ってないですかねえ。あの場面は見ごたえあると思いますけど・・・。)
それでも気を取り直して、最後まで楽しませてくれた彼女にお願いし記念写真。
「この写真、ブログとかに使っていいですか。」
「はい、どうぞ。残り時間を教えていただいて、本当に助かりました。」
「決して怪しいものじゃないので・・・。」
「峨山禅師でしょう。」
こう言ってもらってうれしくて、もう制限時間内完走なんてどうでもいいやと思えてきた。
ゴール地点からおもてなし広場に向かって歩いていると、何人もの人から「どうでした? 時間内に入れました?」と聞かれた。
「4、5秒アウトやったみたいです。」
「えー、もったいない・・・。」
そんなやり取りをしていると、「完走証発行所で聞いてみられたら」と言ってくださった方があった。まあダメもとで行ってみるか。
「完走証、出てますよ。」
まさか、まさかの「14時間29分59秒」。
最初私は、二人ほぼ同時にゴールしたのに、一人に完走証を出し、もう一人は何もなしではまずいと思われ、計測器を操作してくださったのかと思った。
次に、やっぱり仏様ががんばったお駄賃をくださったかなあとも思ったり。
真相は、どうもデジタル計時板が実測より10秒ほど進んでいたのが原因のようだ。
いずれにしても、最後まであきらめずにがんばって進んだのがよかったんでしょうね。
そのあとは先ほど声をかけてくださった方を見つけては、「制限1秒前ゴールになってました」と報告させてもらった。それを聞いた皆さんが、我がことのように本気で喜んでくださった。
レース中はみんな自分のことに必死で、禅僧風の私にもあまり声はかけてもらえなかった。しかし制限時間ギリギリのアナウンスを聞いておられた方は多かったようで、ゴール後はたくさんの方から声をかけていただいた。本当にありがとうございました。
ふるまい鍋だけいただき、「27番」さんにお礼を言って羽咋駅行き送迎バスに。羽咋駅に着くと、うまい具合に8時20分発七尾行きに乗ることができた。
27分間の乗車時間に、今日のレースを振り返る。
正直、私の37年のランニング歴で最も過酷なレースだった。一番きつかったのは、真っ暗闇の山中を走ったこと。それも足元がドロドロのところを。
それでも最後の最後まで「制限時間を過ぎてもゴールだけはさせてもらう」という気持ちを持ち続けたのがよかった。
本来下りのほうが得意な私が、太ももの前側をやられてしまい歩くのも困難になってしまった。最終盤が平坦と上りが多い区間でラッキーだった。あれが逆にずっと下りだと走りきれていなかったと思われる。
私の「作務衣」姿を見て、「暑くないですか」と何度も聞かれた。「全然だいじようぶですよ。練習で何回も着て、慣れましたから」と答えておいた。
「菅笠」についても「走りにくいでしょう」と言われた。「風さえなければ、全然だいじょうぶ。」かえって、雨が降り出した時にもうろたえることがなくてよかった。
シューズは「アディゼロタクミ・イドミ(挑)」。トレイルラン用では全くないのだが、私自身がトレイルランナーではないのでこれで十分。コースによって履き替えるよりも、ふだん履き慣れているシューズをいかにコースに合わせて使いこなすかが大事。
たしかにツルツルの坂ではよう滑りましたわ。でも、ギザギザのきついシューズで滑りがましだとして、そんなシューズで平坦地(ましてやアスファルト)を走ってられますか。
次にまたトレイルランに出るとしても、バリバリのトレイル専用シューズはいらないような気がする。
それよりもゲーターとソックス。今回もC3fitのゲーターはよかった。このゲーターについては文句のつけようがないくらい具合いい。
それに、アシックスミドルショート5本指ソックス。甲状腺摘出手術のあと、私の足首は冷えに過敏になってしまい急所のようになっている。ここをすっぽり包んでくれたこのソックスは心強かった。
以上、トレイル初心者の方には参考になったでしょうか。
七尾に向かう同じ車両に、セーラー服の女子高校生が一人乗っていた。頭上の棚に、大きな大きなキャリーバッグを載せていた。同じ車両はガラガラで、男は私一人。七尾駅に到着した時、怪しまれないかと心配だったが声をかけてみた。
「バッグ、降ろしましょうか。」
「ありがとうございます。お願いします」と即答。
「京都に行かれてたんですか。京都のおみやげが見えたので・・・。」
「そうなんです。」
「私は逆で、京都からこちらのマラソン大会に走りに来たんです。」
「そうなんですか。」
素直に喜んでもらえてよかった。
七尾駅からさたみやさんまでは、歩いて10分ほど。
着替えないで「作務衣」姿のまま。「菅笠」は手に持って。
宿に到着すると、すぐに「制限1秒前完走」を報告。私の姿を見て、おかみさん(ふみちゃん)がいろいろと聞いてこられた。
「その笠はいじくらしくなかったですか。」
「えっ? いじ・・・。」
「あー、なんて言ったらいいのかなあー。うーん、じゃまになると言うか、うっとうしいと言うか・・・。」
「あっ、風がなかったんで全然気になりませんでした。雨が降り出したときにかぶっていて、これは便利と思ったくらいです。」
金沢弁で「いじくらしい」は、「わずらわしい」「うっとうしい」という意味らしい。
私も、ヨメさんやきくに「いじくらしい」と思われんようにかしこうして生きて行かなあかんね。
Posted by パオパオ トラックバック ( 0 ) コメント ( 2 )
トラックバック
トラックバックURL
http://blog.kyoto-carrot.com/tb.php?ID=4314
コメント
そとみねさん、コメントありがとうございます。
自分でも、まさかまさかの結末でした。
京都方面から、たくさんの「気」が送られていたような気がします。
10月8日の「鴨川ゆっくりラン」のとき、そとみねさんに背中をさすってもらったのが意外と効いたのかも。
ブログがまだ途中なので、またのぞいてくださいね。
おつかれさまでした
完走おめでとうございます
凄すぎます
いやー、ホンマに神様、仏様、、
見てくれてはりますね