パオパオだより

2016年10月28日(金)

私をくいとめて [雑用]

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◎朝日新聞10月27日朝刊・福岡伸一の動的平衡㊽

   互いを際立たせる明と暗

 世界のあらゆる現象は相互に関係し、影響を及ぼし合っている。独立しているように見えることでも、必ず何かとつながっている。でも私たちはついつい目立つことだけに注目し、その背景にあるものを忘れがちになる。

 デンマークの心理学者ルビンが考案した壺(つぼ)の絵はそんなことを思い出させてくれる。中央にある白ログイン前の続きい図に視線を向けるとそれは壺に見える。ところがひとたび周囲の黒い地の部分に目を移すと、そこには二人の向かい合った人間の顔が浮かび上がる。これは図と地の関係と呼ばれるもの。互いに反転しながら、他を律し、補い合う。

 明るい場所がひときわ明るく見えるためには、周囲に深い闇が必要となる。高い山をより高く際立たせるためには、両側に急峻(きゅうしゅん)な谷の落ち込みがいる。

 一時期、結婚相手として「三高男」というものがもてはやされたことがあった。高学歴、高収入、高身長。女性の皆さん、よく考えましょう。そんなものに吹かれるのはやめておきなさい。ろくなことはないですよ。なぜなら三つの高みを作るためには、その周囲に(三つではなく)四つの谷間が存在しているはずだから。三高男を一皮むけば、裏側に、四つの闇が潜んでいるかもしれない。たとえば、浪費、浮気、DV、マザコンのような。いつ反転するか、それはわからない。(生物学者)
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 今日は、寮2(出町)24時間。
 例によって例のごとく、10日分ほどの朝日・日経のチェック。いろいろとおもしろい記事が見つかったが、今回は「ルビンの壺」の話がピカイチかな。

 ヨメさんが私を見てため息をつくたびに、私が言っていることがある。
 「DV夫とちごてよかったやん。」
 その言葉にヨメさんは渋々納得。

 「優しそうに見えて、すごく感じのいいダンナさんが、家に帰ったら奥さん殴りまくってはることもようあるらしいでー。」
 何を根拠に言っているんだか自分でも定かではないが、こう言うとだいたいその場は収まる。女の人にとって、夫の暴力ほどいやなものはないみたい。

 ただ、私は「浪費、浮気、DV、マザコン」もない代わりに、「高学歴、高収入、高身長」もない。強いて上げれば、私の白の部分は「いつもニコニコ、犬猫大好き、執着心なし」かな。黒の部分は分かっている。「自分勝手、自分勝手、自分勝手、自分勝手」。まあー、白黒のはっきりせんええかげんな男ですわ。
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 ヨメさんがブログの管理会社に掛け合ってくれて、消失した記事がちょっとだけ復元できそう。でもその手間が大変で、なかなかその作業にとりかかれそうにない。
 ああ、せめて入院した10月3日以降が救われていたらなあとつくづく悔やまれる。あれからあとは、自分でも冷静に整理できた記事が書けていたと思っていたのに。ほんまにどこにも残ってへんにゃろか。
 私にとって、そこからのブログ記事の消失は体の異変以上に大変なものだった。これは、ちょっとやそっとでは立ち直れそうにない。

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 朝日新聞金曜夕刊に連載されている「私をくいとめて」(綿矢 りさ)。楽しみにしていたのに、入院していたかげんで2回分飛んでしもた。

 暴走「死ぬ死ぬ詐欺男」である私を、しょうことなしでもくいとめてくれるのはヨメさんだけでしょうね。

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2016年10月27日(木)

「うそやろ」 [雑用]

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 今日は、寮1(二条)17時間。
 ほんとうは私は昨日の水曜だったのだが、高石ともやさんの公演に行きたかったのでもう一人の代行さんと交代してもらった。そのため、今日深夜に帰って寝て起きて、それから寮2(出町)に24時間。病人にはきっついスケジュールでっせ。

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 朝一番の開錠やゴミネット出しが終わり、すぐに中野勇人さんにメール。今日10月27日は中野さんのお誕生日。私より6、7歳下。うちのヨメさんとほぼ同世代。来年以降、「55からの就活」ってゆってはったけど、また嵐に向かって走らんなんですね。

 「誕生日おめでとうございます」のついでに、私の最近のブログ8か月分が消失したことも報告しておいた。10月21日の「第54回国会前アピールラン」の記事もなくなってしまって残念と。

 そしたら帰ってきたメールで癒されましたわー。
 「ブログの消失、公安のサイバー攻撃じゃないですよね。」

 「おちょくり」の腕、知らん間にぐっと上げとるがな。
 昨日一日落ち込んでいたのに、この中野さんのひと言でだいぶ救われた。そんなことあるはずがないけど、「わしも公安から攻撃されるほどの大物扱いかー」とか思っときゃええんか。こらおかしい。わらける。
 ええ友だち持ちました。
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 いつものそうじの○内さんも、また声をかけてきてくださった。
 退院後初めてお会いしたときに、「そんなめずらしい病気に当たるんやったら、宝くじ買いよし。絶対当たるえー」とおちょくりアドバイスをしてくださった方。あの時の「ニタッ」と笑った顔は忘れられん。(10月?日の「宝くじ買いよし」の記事も消滅。)

 今日は、「体調はどうえー。」
 「元気バリバリ。」
 「○明さん(もう一人の代行さん)に聞いたけど、またいっぱい走ってるんやて。」
 「お医者さんが、何してもええし、何食べてもええゆうてはりますし・・・。」
 「前とおんなじくらい走ってんの?」
 「はい。喉がつかえる感じで息苦しいんですけど、がんばって走ってます。」
 「うそやろ。」
 「えっ、なんですって。」
 「藤井さん、病気って、うそやろ。」
 「うそちゃいますって、手術してきましたって・・・。」

 ○内さんは、また「ニタッ」と笑っておられた。

 「あっ、それとな、延命治療していらんかったらちゃんと紙に書いとかなあかんよ。口だけでは何の証明にもならんし。家族はな、いざとなったらなかなか延命治療は打ち切られへんねん。私はちゃんと紙に書いて置いてある。藤井さんも、ちゃんと書いときな。」
 「はい、そうじのおばちゃんが書けゆうたんで書きましたって書いときますわ。」
 「そうそう。」

 絶対おちょくられとる。
 悔しいけど、おもしろい。これで負けるわけにはいかん。
 ○内さんをギャフンと言わせるような「おちょくり返し」をしたいなあ。

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【今日のきく】

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 夜中12時前にきくの散歩。
 誰もいない近くの公園。

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 ちょっとだけですぐ帰ったらすねてしまった。
 お風呂上りに「お二階であそぼか」と誘ったが、「ガウ」と一蹴。
 しかし、そのあとすぐ反省して二階に上がってきた(上がってきたと言っても自分では上がれん。恥ずかしいけど抱っこです)。

 またすぐ起きてバイトに行かんなんけど、きくをすねさしたまま寝るわけにはいかん。遊んだったら、まあまあ納得したみたい。11歳やというのに、すぐすねるからかなんわ。

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2016年10月19日(水)

アヘアへゆうたもん勝ち [雑用]

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 今日は寮1(二条)。
 こちらの寮では、食堂の料理長さんやパートさんと話すことも多い。

 現在の料理長S本さんは、今年4月から。学生寮の食事なので適当にやられるのかと思いきや、この人には料理人魂がある。来られた当初から、それをすごく感じていた。
 いつも話される中身もしっかりしているし、第一表情が明るい。人生すべていいかげんで、「魂」というものとは縁のない私は、本来このタイプは苦手であったはず。ところが、しゃべっていてイヤな感覚が全くない。なぜだか分からないけれど。

 私の病気が発覚して、食堂のメンバーには言ってなかったのだがどこからかいつの間にか伝わっていた。まあ別に隠していたわけではないし。

 退院して2日後の先週13日。私を見つけたS本さんが声をかけて来られた。
 「全然だいじょうぶですやん。えらいもんやわ。前と変わらずニコニコして出てこられたんで安心しました。」
 「手術はけっこうてこずって大変やったみたいですけど、なんちゅうたって全身麻酔ですし。なーんにも分かりません。でもこれで終わりじゃなくて、まだまだ検査とか治療が続くらしいです。」
 「ほんまですか。こんな元気やったら、もう病院行かんでもよろしいで。病院行く行かんは本人の勝手でしょ。」
 「えっ、それは斬新な意見・・・。」
 「そうですよ。高いお金とたくさんの時間使って病院行ってる間に、ほかのこといっぱいできますよ。」
 「うーん・・・。」

 この意見は斬新過ぎてビビった。病院に行かない自由ねえ・・・。


 そして今日。
 またS本さんが声をかけてきてくださった。
 「検査の結果は?」
 「それが検査自体が明日で、結果が分かるのがその10日ほど後で・・・。」
 「ほらな、ゆったでしょ。そんな大変な病気やったら、はよう検査してすぐ治療に入れちゅうねん。そんなゆっくりしてるってことは、藤井さん、だいじょうぶですよ。もう病院行かんでもええんちゃいますか。」
 「またまた。それは不安ですわ。うちのヨメさんも、ずっと健康でいるかコロッと死ぬかどっちかはっきりしてや、ゆうてますねん。看護とか介護とかはぜったいにせーへんしなゆうて。」
 「それが普通でしょ。反対の立場になって考えてみてください。藤井さん、奥さんの介護を何十年もできますか。」
 「うーん。」
 「なんでも、白黒はっきりさせた方がよろしいよ。それでね、最後は『根拠のない自信』ですわ。それがあったら、また笑顔で戻ってこれますわ。」
 「『根拠のない自信』ねえ、自信ないなあ。」
 「それと、いっつもヘラヘラしてるこっちゃね。そういう人には病気がつかんらしいよ。」
 「いつもヘラヘラ、それは自信ある!」
 「そうそう、それでよろしいやん。理想は寛平ちゃんのアヘアヘアへやね。アヘアヘアへゆうたもんの勝ちですよ。寛平かって癌やったのに、あんなに走って、今もテレビに出てるやないですか。」
 「ほんまや、ほんまや。アヘアヘアへ、ウーヒーハーやね。」
 「それそれ。これからも、藤井さんが毎週当たり前のようにそこに座ってるのを楽しみにしときます。」
 「ありがとうございます。必ず戻ってきます。」

 魂の料理人S本さんはすごい。
 ランナー以外にも気が合う人ができそうだ。よかった。

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【今日のきく】

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 寮の管理代行の仕事から帰ってきたのが、夜の11時45分ころ。
 
 「きくちゃん、ちょっとだけだやでー」と言って、深夜のお散歩。

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 ちょっとは喜んでくれたんかなあ。

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2016年10月15日(土)

たいちょうがいいから [雑用]

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 今日の夕方、私のガードマンのホームグランド・○ナートへ。
 地下で差し入れのお菓子を買ったあと、4階のガードマン詰所へ。

 ドアを開けると目の前にI隊長。
 「あー、藤井さん。手術どうでした?」
 「はい、おかげさまでうまくいきました。手術後声が出にくくなる人が多いって聞いてたんですけど、この通りしっかりしゃべれてます。」
 「そうですか。それはよかったですね。」

 ふむふむ、ほとんどの人は手術がうまくいったかどうかが聞きたいのだ。それに対しては「大成功です」でいい。「死ぬ死ぬハラスメント」は引っ込める。

 「また来てもらえますか。」
 「それがね、病理検査に引っかかって再検査ですねん。そのあと、転移している部分の治療に入る予定です。」
 説明はこれで十分ですね。いらんことはゆわんとこ。

 「そしたら、これからがたいへんですね。」
 「そうなんですよ。でもうちのヨメさん曰く『病気は治す気のある人だけが治る。アンタはなんにつけてもやる気なしやから、病気治す気もないやろ』って。」 
 「これは手厳しい。でも、奥さんは藤井さんに奮起してもらおうと思って、わざとそんな言い方してはるんですよ。」
 「ボク、今までひとに言われて奮起したことなんか一回もないんですけど・・・。」
 「そうなんですか・・・。」

 「でも顔色もいいし、とても病人には見えませんね。」 
 「そうでしょう。今のとこ、ピンピンしてますねん。新しい治療が始まったら、どうなるか分かりませんけど・・・。」
 「藤井さん、それやったら仕事に出てきてください。家に閉じこもってたらあきませんよ。私の知っている人も、大病にかかっても仕事に出てきている人のほうがずっと元気になって行ってますし。フォローはしますので、考えてみてください。」
 「えー、そんなんでいいんですか。中途半端に出てきても迷惑かけるだけやし、このまま治るまでずっと休ませてもらおうかなあと思ってたんでけど・・・。」
 「動けるうちは動いた方が絶対いいですよ。明日どうです。今からでもだいじょうぶですよ。」
 「明日? それはなんぼなんでも心づもりができてませんし・・・。」
 「それはそうですね。そしたら、来週でも。」
 「ありがとうございます。そんなふうに引っ張ってくださったらうれしいです。ヨメさんと相談して、考えてみます。」
 「本当に無理は絶対禁物ですけどね。ところで、明日はどうですか。」
 「ずずっ。なんですか、それ。心配しくださってるような、そうでもないような・・・。」
 「バレましたか。」
 「でも復帰するんやったらここでと思ってます。なんちゅうたって、ここは隊長がいいから。」
 「ああ、そんなふうに言ってもらってありがとうございます。」
 「隊長、藤井さんがゆわはったんは、体の調子のほうの体調のことですよ」とガードマン仲間のF田さん。
 「ちゃいますちゃいます、I隊長のことですって。」
 「藤井さん、うまいんやから」とF田さん。

 「地下でお菓子こうてきましてん。みんなで分けて食べてください。」
 「藤井さん、隊長に渡したらあかんて。こそっとポッポナイナイしやはるから」とまたF田さん。
 「ほんまや、忘れてた。えーっと、4種類のお菓子こうてきたんで、あとで厳しくチェックね。」
 「もう、かなわんなあ」とI隊長。
 
 こんなバカ話ができるから、やっぱり仕事に出てきたくなる。ようよう考えてみよう。

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 あとは、3階駐車場で仕事中の○舘さん。
 後ろ姿がうちの真樹みたいでしょ。

 「仕事中すいません。○舘さんの顔、見に来ました。」

 ○舘さんは私の話を聞いて驚いていた。なんちゅうたって、こないだ会ったのが私のジョギング中やから。でも、くわしい話はしなかった。ひとを心配させるのはほどほどに。「死ぬ死ぬハラスメント」、自重です。

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【今日のきく】

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 今日も楽しい朝の散歩。
 自撮りすると、なかなか真ん中に入れなーい。

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  夕方、「京都キャロット」へ。

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 きくちゃん退屈そうだったので、こんなくん巻きを。

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 似合いすぎ!

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 オラオラオラー!

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 てってってってってー。

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 さっき暴れたし、もういいですの顔。
 今日もいろいろありましたねー。

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【追加】

 今、「箱根駅伝予選会」のニュースをやっていた。
 惜しくも11位に敗れた、中央大の1年生主将の舟津君のあいさつを見て泣いた。
 なんぼしっかりしとるんじゃー。

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2016年10月13日(木)

「宝くじ買いよし」 [雑用]

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 今日から仕事に復帰。
 「重労働はお勧めできませんが、それ以外ならだいじょうぶですよ」と聞かされていた。重労働系のガードマンは当分あかんかねえ。でも寮のバイトだけではねえ・・・、収入が。

 寮の管理代行は時間がとてつもなく長いが、上手に過ごしたら体は楽。
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 藤井さん、手術されたんですって?」
 今まであまりしゃべったったことのない食堂パートのTさんが話しかけてこられた。
 「もうだいじょうぶなんですか。」
 「一応退院はしたんですけど、病理検査の結果が悪くて、また検査受けなあかんのですよ。」
 「そうなんですか。実はうちの娘も先日同じ手術を受けまして、今はすっかり良くなってますよ。」
 「それはよかったじゃないですか。ボクも腫瘍取ったらそれでしまいとばっかり思ってたんですけどね。うまいこといかんもんですわ。」
 「大変だと思いますけど、お大事になさってください。」
 「ありがとうございます。」
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 8時45分には、掃除のKさん。いつもコーヒーをおごってくれはるおばちゃんです。
 「藤井さん、どうやったん。」
 「はい、ありがとうございます。手術はてこずったみたいですけどなんとかうまいこと行きました。でも取ってもらった腫瘍を調べてもらったら悪性で、全身に転移している可能性もあるらしいんです。それの検査をまた受けんならんのです。」
 「あら、それはたいへんやん。」
 「大きな声では言えませんが、はっきりゆうて癌です。」
 「甲状腺の癌なんて聞いたことないえー。」
 「そうでしょ。めちゃくちゃめずらしいんですって。」
 「ガーンときた?」
 「も−う!」

 「でもそんなめずらしいもんに当たるんやったら、藤井さん、宝くじ買いよし。きっと当たるえー。」
 「それがね、ボクは悪いことはよう当たるんですけどええほうさっぱりあきませんねん。ヨメさんが一番ええのん当たってるから、しょうがないですねえ。」
 この最後のいっちゃん肝心なところがうまく言えなかった。「ガーンときた?」に食われてしもたなあ。次回までにきっちり修行しとこ。
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 午前中に、大学時代の同級生・としさんからメールが来ていた。
     ◇     ◇     ◇
 おはよー!
 久しぶりに きくの様子を見にいったら きくは可愛い
 あれ〜 おっさん入院してはった ビックリ!!

 (中略・としさんの病気について)

 病気とのお付き合いの先は長いので 
 ペース配分を気負わず
 のんびりやりましょう
     ◇     ◇     ◇
 お互いメールアドレスは知っていても、決してメールをしない仲。
 そんな彼女からのメールはありがたかったが、かえってそれが私の病状が深刻なものなのかとも思いめぐらしてしまう。
 それにしても、なんぼ病人の大先輩とはいえ、「きく」は「きくちゃん」、「おっさん」は「藤井君」にしてもらわんと。たのんまっせ。

 これは仕返ししとかんと。
     ◇     ◇     ◇

 メールありがとうございます。藤井です。
 私もかなりめずらしい「甲状腺低分化癌」というのになりました。
 腫瘍をとったらしまいと思っていたのに、全身に転移している可能性があるらしいです。20日にPET検査で、31日に今後の治療方針が決まります。さてどうなることやら・・・。
 としさんのことを「死にかけの」と紹介していたのに、今は自分が死にかけています。死にかけの大先輩に、平常心を保つ心構えを教えてもらわなくては。
     ◇     ◇     ◇


 それに対する返信。
     ◇     ◇     ◇
 (前部分略)

 医者はいつも最悪の話をするので
 自分におこるかもしれない他人事として妄想しないでね

 ペット検査は 薬を血管注射して
 水飲んで寝てたら終わるから 楽勝や
 ケータイ 電池ない
 帰ったらまた
     ◇     ◇     ◇

 「最悪の話」、それは分かっとるんやけど、どうも最悪が現実化しとるようで不安なんじゃー。
 病気の大先輩・としさんののように、なかなか平気っぽくはなれんなあ。
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 真樹からもメールが来た。
 マネージャーをしていた名桜大軟式野球部が、5年ぶりに西日本大会に進出。11月5日に兵庫県で試合があるらしい。
 「パオパオも一緒に応援行きますか??」
 「行けますよー。」

 ああうれし。真樹が帰ってきてくれる。
 真樹は私のようにお気楽人間ではないから、私の病気のことを真剣に考えてしまってかわいそう。だから情報も、このブログにちょっとずつちょっとずつ小出しに。
 とりあえず、今できることをできるだけ楽しむようにしていきましょう。
 きくちゃんも、待ってるしー。

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寮長寮母さんからの退院お祝い

 久しぶりの仕事はやっぱりしんどい。
 17時間は長かったー。

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【今日のきく】

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 夜12時前に家に帰る。
 いつもはきくちゃんがひょろひょろひょろとお出迎えに来てくれるのに、今日はなし。なーんか元気ない。

 でも、寝る前に「きくちゃん、あそぼか」と言うと、「ガウガウガウガウ、ガウガウガウ。」
 「なーんや、あそびたかっただけやん。よかった。」

 きくちゃんのこと「かわいい」って言ってくれはる人もいるんやし、またかわいい写真撮らせてな。

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2016年09月21日(水)

一畳部屋の・・・ [雑用]

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 「こうじさんこうじさん、れんちゃんがどこ探してもおらへんねん」と、ヨメさんが血相を変えて走ってきた。
 「えっ、どうゆうこと?」と、石垣のところで日向ぼっこをしていたネコをなでていた私は聞き返した。
 「川の横を歩いてたっていう人はたくさんいやはったんやけど・・・。」
 「流されたんかもしれん! 川下さがしてみよう。」
 それから二人で、「れんちゃーん、れんちゃーん」と大声出しながら川沿いを下って行った。
 「ますみちゃん、きっとここやわ。れん、れん、おらんかー。」
 「パオパオー!」
 私が目を付けた川のくぼんだ所から廉の声。
 「ちょっと待っとき、すぐ行くし。」
 川に降りると、廉がくぼんだ所にはまってしまい出られなくなっていた。そこらにある木の枝を使って、邪魔しているゴミをかき分けた。そしたら、廉がコロコロと・・・。
 「ますみちゃん、よかったよかった、れんが出てきたわ。」
 
 えっ、でも、廉て小学生やったっけ・・・。
 そこで目が覚めた。

 今日は寮1(二条)の管理代行17時間。
 今の寮長寮母さんはずっと寮におられるので、私が宿直をすることはほとんどない。よって、一畳部屋のベッドも撤去。代わりに130cmほどの長いすが置いてある。
 午後1時から3時ごろまでは窓口業務も休けいということで、「この長いすで寝転んでください」と言ってくださっている。ただし、電話はかかってくるし、寮生が呼び出すこともあり、ゆっくり休めるという感じではない。第一、寝るには狭すぎるし。
 今日も横になってうとうとした時、「こうじさんこうじさん・・・」の夢。
 廉はもう25歳なんですよね。かわいいお嫁さんもいて、しっかり働いているんですよね。私は廉のことを心配したこともないのに、今は私の病気のことを心配してくれてるんですよね。
 生まれてすぐから出張販売に連れてきて、何回も危ない目にもあわしたので、それが今ごろ夢になって出てきてるんかな。
 でも、10歳くらいの廉が「パオパオー」ってゆってた場面はかわいかった。まあ今日のは悪夢ではないでしょう。
 これからもこの一畳部屋でうたた寝をすると、また小さい時の廉や真樹が夢に出てくるんかなあ・・・。

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