パオパオだより

2012年03月02日(金)

嗜虐的愉楽 [時事]

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◎毎日新聞2月28日夕刊 
   特集ワイド:日本よ!悲しみを越えて <この国はどこへ行こうとしているのか>

 ◇性急な単純化が怖い−−中島岳志さん(37)

 <多弁という失語状態>
 震災後のこの国に漂う空気を近著でこう表現した。

 「言論のスパンがすごく短くなってきましたよね」

 スケジュールの詰まった東京滞在中、トークイベントの会場から駆けつけてくれた中島さんは、疲れも見せずに語り始めた。抹茶のわんを前に、言葉一つ一つを確かめるように。

 「ツイッター社会というのか、何か起きたら瞬間的に反応して、気の利いたことを言う。すると、(他のユーザーがその言葉を拡散させる)リツイートがいっぱい発信される。ところが、そうした言葉も1週間後にはもう古くなってしまう。断片的熱狂のような状態。もう少し立ち止まって考えなければいけないことが、いろいろあるはずです」

 3・11から間もないころ、「死者との出会い」について記した文章を発表した。「がんばれ」の洪水は、実は被災者を追い詰めているのではないか。その違和感から出発してつづった一文だった。死は喪失ではなく、死者となった他者との出会いでもある−−そんな思いを込めた。

 「僕自身の経験ですが、編集者だった友人が亡くなった後、文章を書き飛ばしている時などに、自分の観念の中に彼が現れることがあるんです。『こんな文章でいいのか』と僕自身、彼のまなざしを通じて自己と対峙(たいじ)している」

 死者となった人との間に生まれる、生前とは違う関係性。死とは、その人を失ったというだけではなく、出会い直しもしているのではないか。中島さんはそう考える。

 「それは、僕たちがよりよく生きること、自分をごまかさず向き合うことを要求するような出会いです。大切なのは、そうして死者と一緒に生きることじゃないかと思ったのです」

 未来のことばかり考えるのではなく、死者を思うことで落ち着いて生きられるのではないか。そのメッセージは静かに被災地に広がっていった。

 もうすぐ震災から1年。被災地の未来と復興がさまざまに語られる一方で、大きな進展のない現実に対する世の不満も高まっていく。中島さんの目には、震災がこれまで日本が抱えていた問題をあらわにしたと映る。「震災によって何かが始まったというのではなく、日本の弱い部分が露呈したのだと思います。構造自体は何も変わっていない」

 危惧しているのがシニシズム(冷笑主義)だ。「地震によって、政府への信頼が異常な形で地に落ちた。福島第1原発事故では、東電の出すデータも信頼性がない。御用学者、原子力ムラという言葉がはやったように、アカデミズムもだめ、大手メディアも信用できない、となった」。自分で放射線量を測定したり、情報の真偽を見極めなければならない「究極の自己責任社会」。増大する不安の中で一人一人が疲弊し、欲求不満を募らせる。

 「そうした時、シニシズムがさらに加速し『救世主待望論』へとつながってくる」。ごちゃごちゃ言わずに決断する政治家を、バシッと大ナタをふるってくれる指導者を−−そういえば、そんな論調が震災後、明らかに目立ってきている。「たとえば橋下徹・大阪市長。彼はそういう社会に適応した人で、出るべくして出た言論、出るべくして出た政治家という印象があります」

 この「橋下的」政治手法に批判的な論者の一人でもある中島さん。みんなが感じている「いらいら」や「閉塞(へいそく)感」が「橋下的」なものへと向かうメカニズムをこう解説する。「彼はイデオロギーの政治家ではない。左とか右ではなく、既得権益バッシングなんです。ちょっと楽をして得していると見えてしまう人を徹底的に引きずりおろす。彼が与えるものは具体的利益ではなく、嗜虐(しぎゃく)的愉楽ですよね」

 敵と味方という対立構造をつくり、相手をたたく。そうした手法への違和感は、今の原発をめぐる議論にも感じている。

 今回の事故以前から原発には否定的で、反原発デモへの参加もするという中島さんだが、単純な「東電糾弾」論にはくみすることはできないと言う。「原発の問題も、敵がどこかにいて、『あいつらが悪いから自分たちが脅かされている』というような話ではないはず。原発を稼働させてきたのは自分たちの欲望だと思ってみないと、東電の人にも話が通じない」

 確かに、電力を大量に消費する社会で、その利便を享受してきた自分たちがいる。だが、それはある種の「一億総ざんげ」論に行きついてしまうのでは?

 そう問うと、中島さんはイラン情勢に話題を転じた。封鎖が取りざたされるホルムズ海峡。日本が輸入する原油の8割がここを通る。「本当に封鎖されると原油は入ってこなくなる。現実にこれまでの生活水準が保てなくなった時、反原発の世論は一気に反転して『原発動かせ』になると思う。僕が反発したいのは、そういう世論なんです」

 電気がないと全てが動かないような社会に対して一定の批判を持ち、その中で生活している自分を直視すること。それは今の文明に対する根源的な問いでもある。「東電の人たちも、停電のない日本をつくろうと頑張ってきた。そのプライドを認めたうえで、だけど未来に向けてどういうことがあり得るのかを一緒に考えましょうと言わなければ。はなから敵だとみなして突っかかってくる人と真面目に話そうとは彼らも思わない。どう喝では駄目なのです」

 図式的な対立構造を作って「敵」を攻撃する言説は、何も政治家だけのものではない。テレビにも雑誌にも、そして新聞にもあふれている。自身が編集委員を務める「週刊金曜日」にも「現場に行く前から結論が存在しているルポ」などと厳しい評価をする中島さんに、今のメディアが抱える問題点を尋ねると、「分かりやすさという名の単純化」を指摘した。「人間はすごく複雑だから、それをできる限り多くの人が使える言語の形で丁寧に書くこと、これが分かりやすさだと思う。ところが、メディア、特にテレビでは『AかBか』みたいな二者択一型言語になっている。あれは分かりやすさじゃなくて単純化です」

 賛成か反対か。やるのかやらないのか。閉塞状況に駆り立てられるように性急に結論を求め、単純なストーリーに当てはめて、何かを描こうとしていないだろうか……。羽田発の最終便で北海道に帰る中島さんを見送りながら自らに問うた。【井田純】

■なかじま・たけし 1975年生まれ。専門は南アジア地域研究、近代政治思想史。「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞。近著に「世界が決壊するまえに言葉を紡ぐ」。

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 私が持っていた話題のあの人のイメージは、「下品さの極致」、「エセ右翼」、「私憤を晴らす人」・・・。うーん「嗜虐的愉楽を追求する人」、これは思いつかんかったなあ。(嗜虐的愉楽とは残虐なことを楽しむことらしい。)

 「彼はイデオロギーの政治家ではない。左とか右ではなく、既得権益バッシングなんです。ちょっと楽をして得していると見えてしまう人を徹底的に引きずりおろす。彼が与えるものは具体的利益ではなく、嗜虐(しぎゃく)的愉楽ですよね」

 なんで、「ちょっと楽をして得してると見えてしまう」ような人を徹底的に攻撃して、なにもせず大きな得をしている人は攻撃せず仲良くしてるんかなあ。
 けっきょくあの人は、政財界のただの「パシリ」か・・・。

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【RUN】

 今日はちょっとだけアレンジ。
 まずは3km、14分49秒。
 1kmスロージョグをはさんで、1km全力。バス通りのアンパンマンの看板から北稜高校バス停前まで。ゆるやかな下り。
 3分58秒、合格!
 今はこれくらいで走れたらいいでしょう。
 ゆるやかな上り1km、6分11秒。これにスロージョグ1kmをプラスして、今日は7km。

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今日もきくは「帰りません攻撃」

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