2010年12月02日(木)
「上地に似てるから・・・」ー兵庫・ゆめさき舎にてー [私の好きな人]
ゆめさき舎のSA君。
丸1年ぶりに会うというのに、1年前の話の続きから始まった。
「スザンヌが・・・、里田まいが・・・、上地が・・・。」
「どうなっとんじゃー。この1年のブランクは関係なしかい!」と心の中で思いながらも、その話がどんどんふくらんでいく。まあ、これはこれでええことなんかな。久しぶりでもスッと受け入れてもらえたってことやね。
SA君はおしゃべりが大好き。だいたい私の5倍くらいしゃべっている。でもちょっと声が小さいので、私はその半分くらいしか聞き取れていない。それでも言いたいことはだいたい分かる。
またまた出ましたー。
「ぼくは上地に似てるから・・・」
そうか、鼻の下とあごにヒゲをたくわえているのはそうゆう理由なんやね。やるじゃん!
「ところで、SA君、下の名前はなんて言うん?」
「こうじです。」
「こうじー、こうじー、こうじー!」
「なんですか。」
「こうじってゆう名前の人は、いい人が多いでー。」
「えっ?」
「実はな、ボクもな、こうじってゆうねん。」
「・・・。」
「妹が弁当作ってくれてる。」
「えー、そんなええ妹がおるんかいなー。こうじー、自慢の妹やんけー。」
「弟とは野球をやってる。」
「そっか、弟に教えたってんのー。こうじー、ええ兄ちゃんやんけー。」
SA君は、「こうじー、こうじー」を連発されてちょっと困っていた。でも、ちょっとうれしそうでもあった。
別れる前に言われた。
「明日、来れる?」
「明日は無理やわ。」
「じゃー、金曜日は?」
「金曜日って、あさってやん。それは無理やて・・・。」
そう返事しながら泣けてきた。明日でもあさってでも、こんな変なオッサンでも来たら喜んでくれるんや。
ほんま、この1年間なにしとったんやろ。こうやって私がただ来ただけで喜んでくれる子たちがいっぱいいるのに・・・。
今年は、干支の絵馬作りは予定に入ってなかったそうだ。ところが、私が何度も残念だと言ったのを受けて、急きょ今年も取り組んでくださることになった。それなら少しでも手伝わなければ。
私は、絵馬の屋根の部分の色付けをさせてもらった。こういう単調な作業は、得意中の得意。
松本さんは、SA君にはんこを使った模様付けを教えておられた。今年はうさぎだが、去年の絵馬よりだいぶバージョンアップしているようだ。
色付けをしていてハタと気づいたことがあった。
あっちで「オーオー」、こっちで「ウィーウィー」、向こうで「ブルンブル」。何年か前の私なら、これらをひっくるめてみな「奇声」と言ってしまっていただろう。でも、何かちがう。これらの声は、私が以前は奇異に感じていたものとはちがう。
なぜだか私のことを気に入ってくれているMI君の一人ミュージカルが、周りのみんなの気分を高めてくれたのだろうか。紅一点のKOさんは120%と言っても言い過ぎではないような満面の笑み。前来たときには声が聞けなかったTA君も、なにやら歌っているように聞こえた。
「奇声」と決め付けているのはこっちの都合。彼ら彼女らの何らかの表現を、そんなに簡単に片付けられてはかなわない。
前来たときにはまったく近づけなかったMA君は、今回もにたようなものだった。でも、せわしなく動きまわっていたのがだいぶ落ち着いたように感じた。表情もおだやか。
今日のメンバー6人中、私にとってただ一人の新人さん。(MA君とイニシャルが重なるので、ここでは「大型新人君」と表記します。体重100kg超級だそうだ。)彼ともまったくコミュニケーションがとれなかった。
ところが、松本さんが「おやつにしょうか」と言われ、私が手を洗って戻ってくると、私の手を引っぱって行ってくれたのだ。もう、それが不思議で不思議で・・・。
大型新人君にとって、それまでの私は視界に入っていなかったはずなのに、突然どうしたんでしょう。これは、よう分からん。でも、予想もしていなかった行動だったのでよけいにうれしかった。
私が持って行かせてもらったクッキーのようなお菓子をみんなで食べた。いろいろな理由で食べられない子もいる。でも、こうしてみんなそろって座ってものを食べるっていいですよね。
今日の男子メンバー5人中、3人が70kg台、1人が100kg台。小さめで細いランナー体型の松本さんは、体力的にも大変だ。その日のきげんによっては大暴れする子もいるらしい。「だいじょうぶかいな」と心配になる。
ご家族の中には大きな施設に入れたがる方も多いらしい。でも、松本さんは「そういうところは、薬漬けにして動きを鈍らせて管理していくところが多い」とおっしゃっていた。
前にはこんなこともおっしゃっていた。「どこからも断られた子を、みんなうちでひき受け入れるという意気込みでやっている。」
「ちっちゃいおっさん、しっかり!」
トイレをお借りした時、洗面所に置かれている絵馬の型が目に留まった。
出来上がった絵馬だけを見ていたらあかんね。こっから始まってるんやね。
もうちょっとお手伝いをしたかったのに、松本さんに急用が入り、早めの帰宅ということになってしまった。
送迎車は、○○君の車内での大暴れの結果、バックミラーまで取れてしまっているハイエース。今日も退屈して暴れそうになっていたので、私がそれに輪を掛けて暴れまくったった。
「先手必勝!」(意味不明)
そしたら、さすがの○○君もあきれて笑ってた。
紅一点KOさんのおうちの前に、ちょうどご両親が歩いておられた。
「私みたいなもんでもおじゃまさしてもうたら、ものすご喜んでくれはって・・・」と言うと、
「そうでしょ。うちの子はお客さんが大好きで・・・」とお母さん。お父さんもうれしそうに笑っておられた。
私も姫路駅前まで送ってもらった。
松本さんとお別れする前に話したこと。
「ボクはほんまにたまに来て、自分のしたいことだけして引っかきまわして帰っていくだけ。毎日毎日ずーっとたいへんなことをし続けてはる松本さんらの苦労は忘れたらあきません。それだけは肝に銘じとかんとね。」
以前、松本さんが「藤井さんの考えが自分とよく似ていてびっくりしています」とおっしゃっていた。福祉の仕事に骨身をけずっておられる松本さんと、ヨメさんの稼ぎで食わしてもらっている私をくらべたらあかんて。
でも、一つだけ似ているところがある。
「どんな運動も、内輪だけで盛り上がっていてはダメ」と思っているところ。私のような福祉の「ふ」の字も知らんような者も、邪魔くさがらずに受け入れて下さるのはそう思っておられるからだと思う。しろうとにはしろうとなりの「Good idea」があったりしますもんね。
このブログの記事を見て下さった方が、福祉の仕事への理解を少しでも深めてくだされば私はうれしい。
Posted by パオパオ トラックバック ( 0 ) コメント ( 2 )
トラックバック
トラックバックURL
http://blog.kyoto-carrot.com/tb.php?ID=1057
コメント
智さん、コメントありがとうございます。
長いブランクのあった「ゆめさき舎行き」を後押ししてくれたのは智さんの存在です。前に智さんがコメントを入れてくださって、それからますますゆめさき舎に行きたくなりました。
松本さんにも智さんのことを話しました。「福祉の勉強をしている沖縄の青年がパオパオだよりを見てくれている」と。
ゆめさき舎の記事に関しては、本当に見たまま感じたままを書いています。智さんは「私の視点」をほめてくださってますが、「なんてバカな」と思っておられる方もあるかもしれません。
とにかく、私が「ゆめさき舎行き」を十分楽しんでいるということだけは分かってもらえてるかなと思っています。
まあ、これでも私なりにかなりセーブして書いているんですが・・・。
次は「智さんの視点」で、いろいろと教えてくださいね。
こんばんは。パオパオさんもゆめさき舎の方々も、松本さんをかこんでアットホームな感じのなんだかいいご縁があって、いいな〜と思いました。(僕は勉強中です^o^)
社会福祉士と精神保健福祉士の実習を思い出しました。
とても優しい職員さんと利用者の方々だったのですが、理論と現場のギャップには驚いて、「う〜ん」と悩む一ヶ月でした。
精神科病院での実習では、「大きな病院に5年以上の長期入院療養者が利用できる図書館がない」、情報提供と言えば「階ごとのロビーに一個のテレビ」しかないことに、なんだか「う〜ん」と思う日々でした。
実習指導者の方にも聞いてみたのですが、「利用者を自分のレールにのせては、本当の援助になりません」と言われました。そのときは、いろいろと納得したのですが、いまは「う〜ん」です。
精神科病院と系列が同じ入所施設の両方を長く経験している先生からは、「うちの施設にはDMで入所者宛にユーキャンの資料が来たり、ちょっとした雑誌類はそろえているよ。大きな総合病院では患者図書館あるけどね…」とのことでした。
パオパオさんの一日日誌?(ゆめさき舎)をみて、「パオパオさんの視点て、いろんなところにあるんだな」と思いました。僕の一日の実習日誌より豊かな感じです・・・。
(夜間学生の僕の同級生は、みんな社会人だったので、経験豊富な人は同じ実習施設でも「見て聞いて感じる」視点が大分違うと思いました。)
僕も一歩ずつがんばります。