2014年07月08日(火)
一度戦争をしてみたかった(?) [時事]
◎毎日新聞7月2日朝刊・京都版
集団的自衛権閣議決定 議論十分でない
府内各界からの声
◇クーデター/なぜ急ぐ/地方選挙で反対を
◆京都平和遺族会事務局長、大坪政明さん(70)=南丹市
戦争をする国への大転換を解釈改憲、閣議決定で済ますのは「クーデター」であり、「ナチスの手口に学べ」という閣僚の言葉の実践だ。父は1944年にマーシャル諸島で戦死。遺骨は戻らず石ころの入った白木の箱が届き、母もショックでまもなく亡くなった。
「再び戦没者も遺族も作らない」「憲法9条は戦没者の命の代償、遺言」との思いで遺族会の活動をしてきた。今後法整備の過程で、具体的な問題点が明らかになるはず。「大人はあの時に何していたか」と孫の代に批判されぬよう反対の声を上げ続けたい。【野宮珠里】
◆法然院貫主、梶田真章さん(57)=京都市左京区
私は僧侶として「相手を殺すくらいなら殺されても仕方がない」との覚悟を持ちたいと思う。戦後の日本も、力を持つ国が主導権を握る世界の中で「とことん外交努力をし、それでもだめなら殺されても仕方ない」という方向を目指し、国民的な合意形成を経てきたはず。今回はそれを大きく変えることになる。
人は誰しも自分を正当化したいし、守りたい。私も含めやはり人は愚かだ。それでもみんなで話し合い良い方向を目指すべきだが、今回は深い議論のないまま国の形を変えようとしている。悲しいことだ。【花澤茂人】
◆風刺マンガ家で東京工芸大助教のチョン・インキョンさん(40)=京都市左京区
衆院選での自民の主な約束は経済再生で、「集団的自衛権の行使なんて公約にあったっけ」という感じだった。それなのにあまりに早く解釈変更に突き進んだ。なぜ急ぐのか。アジアの国々を巻き込んだ戦争の犠牲者の上に平和憲法がある。日本人が70年間大切に守ってきたものを、自民と公明だけで変えることは許されない。国民全体で議論を重ねる必要がある。
韓国から来日して18年。私の感覚は多くの日本人と似てきたが、これほど大きな変化に皆が静かなことに驚く。もっと怒るべきではないか。【榊原雅晴】
◆京都大名誉教授(ファシズム文化論)、池田浩士さん(74)=大津市
麻生太郎副総理が「ナチスの手口に学んだら」と発言したが、安倍政権の「解釈改憲」はヒトラーよりひどい。ヒトラーは「政府が定める法律は憲法から逸脱できる」と定めた「全権委任法」を、曲がりなりにも国会で採択し、当時のワイマール憲法を壊した。安倍政権はヒトラーですら取った「民主的」手続きを踏んでいない。
7月1日は、日本が戦争をする国に変わった歴史的転換点として記録されるだろう。国政選挙は当分ないが、まず地方選挙で反対の意思を示し、あきらめず今回の決定を無効にすることが重要だ。【松井豊】
◆暗殺された戦前の社会運動家、山本宣治を顕彰する「宇治山宣会」会長、薮田秀雄さん(69)=宇治市
JR宇治駅前で6月30日夜、安倍政権に対する抗議行動をした。黙っているわけにはいかないからだ。憲法解釈のごり押しで集団的自衛権の行使を可能にするのは、憲法の破壊だ。民主主義の一線を越えている。武力での紛争解決は、何の抑止力にもならず、際限のない軍拡競争につながるだけだ。
命の危険にさらされる自衛隊員や家族こそ、憲法9条を無視した武力行使に反対の意思を表明するべきだ。戦場に行く可能性がある若い人は「殺し、殺されるのは嫌」と声を上げよう。【山田英之】
----------------------------------------------------------------------------------
「戦争が大好きです。武器を持っていれば、一度は人を殺してみたくなるじゃありませんか。そうでしょう、みなさん!」
とでも言ってもらえば理解できるのだが、私には「どんなことをしてでも日本を戦争をできる国にしたい」と思っておられる安倍さんが理解できない
「平和を守るために戦争ができるようにしましょう」って、なに?
最近、何の関わりもない人を突然殺し、「一度人を殺してみたかった」と言う犯罪者が増えてきた。あの人も案外それと同じなのかもしれない。「一度戦争をしてみたかった」と。
このたびの集団的自衛権行使容認に対する評価がワンパターンに近い。まあ一言で言えば「姑息」。右翼系のみなさんは「姑息」な首相を恥ずかしいとは思わんのかねえ。
ただし、「そんなに戦争がしたかったら自分が行け」と言うのはやめよう。そう言いたくなる気持ちも分かるが、これでは相手の土俵にのってしまったことになる。「戦争賛成」という自分と真反対の考えの人も、絶対に殺してはならないし死なせてもならない。
上の5人の中では、法然院貫主の梶田真章さんの言葉が一番共感できる。
「相手を殺すくらいなら殺されても仕方がない」
「とことん外交努力をし、それでもだめなら殺されても仕方ない」
7月1日、これからの日本にとって大変な局面に陥ってしまった。しかしここで腐らず、これからも梶田さんのように考えられる人を増やしていこうと思う。
-----------------------------------------------------------------------------------
【RUN】
台風が近づいているせいか、異様にむし暑い。
沖縄県名護市にいる真樹は、アパートに一人じっとして台風通過を待っているようだ。
今日は「京都キャロット」往復1.3kmを3回。ちょっとずつ走ったのだが、そのたびにすごい汗をかいた。
左アキレス腱の外側は具合悪いまま。
-----------------------------------------------------------------------------------
【今日のきく】
夜の散歩の途中、花背造園さんのウインドウ越しにネコちゃん発見。
たぶん、「デビル」やね。元気そうでよかった。
うちのきくも元気です!
Posted by パオパオ パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2014年06月13日(金)
そんな私的な物語 [時事]
◎朝日新聞6月12日朝刊
(集団的自衛権)傍聴席から見た党首討論 深澤真紀氏、宇野常寛氏に聞く
集団的自衛権の行使容認に向け突き進む首相。多弱野党の3党首は、巨大与党にどんな論戦を挑むのか。女性と社会の変化を読み解くコラムニストの深澤真紀さんと、サブカルチャー野生児を批評する評論家の宇野常寛さんが11日、国会の現場で党首討論を傍聴した。
■首相、自分に酔っている 深澤真紀氏
安倍(晋三首相)さんの話を聞いていたら、頭の中にさだまさしさんの「防人(さきもり)の詩(うた)」が流れてきました。「おしぃえてぇくだぁさい〜♪」って。日露戦争を描いた映画の主題歌です。
海江田(万里・民主党代表)さんは「総理は演説して自分に酔っている」と指摘したけど、確かに安倍さんは自分に酔ってました。「自衛隊の諸君に愛する家族がいることを私は知っている」とか「自衛隊最高指揮官として、重さと責任をかみしめている」とか。
安倍さんは、集団的自衛権の問題では一貫して感情に訴える発言をしている。首相というだけでなく自衛隊のトップとしての意識も強いのかなと思った。軍服着て討論したらいいのに。
全体として緊張感がなかったですね。集団的自衛権の問題は、公明党との与党協議の場にあり、それが大きな局面を迎えていることを、会場にいたみんながわかっているからです。
与党協議の蚊帳の外である海江田さんにとっては成果を残す大事な局面だったはず。なのに発言の冒頭から「集団的自衛権」を「集団安全保障」と言い間違えて、傍聴席の失笑を買った。政府が示した15事例については「我が党は精査中」なんて。「15のうち10項目は個別的自衛権で」とか具体的に攻めるべきでしょ。何でやらないのかな。
安倍さんは討論で「東アジアの安全保障環境が大きく変わっている」と言ったけど、靖国神社に参拝したら中国との関係が悪くなるのはわかっていたはず。安全保障環境を悪くした一人は安倍さん。自作自演といわれても仕方ない。「総理が日本の安全保障にとって大きなリスクだ」って海江田さんが指摘したのは、数少ない良かった点です。
だいたい閣議決定での憲法解釈変更なんて、姑息(こそく)な話です。なのに安倍さんの口から語られるのは「愛する家族を守らなくていいのか」という大きな物語。姑息な話に大きな物語をつけるのは、何かを隠したいからじゃないの?
安倍さんははっきり言えばいい。「祖父(の岸信介元首相)の宿願である自主憲法制定を成し遂げたいんだ」と。国民の多くは安倍さんの本音が、そんな私的な物語にあるのを見抜いている。
世論を意識するなら、見え透いた大きな物語ではなく、素直に本音を語ればいい。家族の物語や泣ける話が好きな人も多いし。私の頭の中には、防人の詩が聞こえてきそうですけどね。
*
ふかさわまき コラムニスト・淑徳大学客員教授。67年生まれ。出版社勤務を経て98年に独立。09年「草食男子」で流行語大賞トップテン受賞。
■反論は具体策を示して 宇野常寛氏
委員会室では、国会議員がやじを飛ばしあい、政治記者はしかつめらしい顔で聞いている。党首討論は、ショーアップした論戦で国会と国民を近づける目的がありますが、実際は誰が何を言うか事前にほぼ分かっている。各党のウェブサイトを読めば分かるような主張の交換が機械的に行われているだけ。存在意義がもはやないと感じます。
その上で最初に立場を明確にすると、僕は民主党側に共感します。安倍政権の進める集団的自衛権への積極的な態度は、かえって国益を損なうのではないかという危惧が強い。しかし、この論戦における海江田万里・民主党代表の主張は空回りしているとも感じます。
もちろん、安倍晋三首相の強引な解釈改憲は行き過ぎている。それは問題の本質ではありません。国民の多くが、強引な解釈改憲を行ってでも、緊迫するアジア情勢に具体的に対応すべきだと考えている現実がある。この現実を覆すには何より、憲法9条の精神を生かしたアジア外交戦略こそがこの危機には有効であるという具体的なプランの提出が必要です。
しかし安倍首相の語る具体論に対し、海江田代表は解釈改憲をめぐる手続き論や形式論を繰り返すばかり。これではほとんどリベラル勢力の逆宣伝です。「強引にでも対応しないとまずい」と言う民意を背景にした意見に「強引すぎてよくない」と反論しても意味がない。
海江田代表が語るべきは「安倍首相のプランでは逆に日本の安全保障は危機に陥る。我が党の安全保障政策ならばもっとことを平和裏に進められる」という主張ではないでしょうか。
どうも自分たちはリベラルだという自意識をもって生きている人の多くが「自民党の宣伝戦略は感情に訴えるものが主で、自分たちの戦略は理知的であるがゆえに脆弱(ぜいじゃく)だ」と考えているように思えます。実のところ逆ではないでしょうか。
自民党は感情に訴えかける言語と、具体案による理知的な言語を器用に使い分けている。一方で、リベラル側は「保守勢力は強権的で恐ろしい」という印象を強調すれば済むと思っている。だから通りいっぺんの形式論に終始してしまうのではないか。本日の討論ではそれが明確に表れたように思います。
最後に、日本維新の会の石原慎太郎・共同代表は体力的にもおつらそうでしたので、あらゆる意味でそろそろ引退されてはいかがかと思います。
*
うのつねひろ アニメなどの若者文化に詳しい評論家。78年生まれ。批評誌「PLANETS」編集長。著書に「ゼロ年代の想像力」「リトル・ピープルの時代」など。
--------------------------------------------------------------------------------
昨日から今日にかけて、泊まりで寮の管理代行のバイト。また朝日新聞を1週間分読もう、と思ったら最近の分が全然なかった。悲しい。
でも昨日の朝刊にいい記事があった。集団的自衛権に関する党首討論を実際に傍聴した2氏の評論。
宇野氏に関しては、今まで外のところに書かれていた内容とほぼ同じ。私には心に響かない評論だった。また、最後の一文は上から目線で不愉快。私は石原さんは大嫌いだが、引退は自分で決めることでしょう。「ほっとけ!」と言いたい。
それに比べて、深澤さんのは分かりやすい。朝の「とくダネ!」で見慣れているせいもあると思うが、たいへん親しみやすい。
「私のかなん人」=安倍・橋下・石原の共通点がうまく言い表せなかったが、深澤さんの言葉で得心するものがあった。3人とも国民・市民の幸せを願って行動しているのではなく、三人三様の「そんな私的な物語」を作り上げるために「そんな自分に酔いながら」生きているだけの人だったのだ。ああバカらしい。
そんなバカらしい人たちに付き合って生きていくのはもうやめましょう。姑息な詐欺師のような人たちの話に心酔することなく冷静になって、自分が大事と思う人の命を守っていける道を真剣に考えましょう。
Posted by パオパオ パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2014年06月05日(木)
解釈改憲こそ妄想の最たるもの [時事]
◎毎日新聞5月27日夕刊・特集ワイド:解釈改憲 作家・高村薫さん
<この国はどこへ行こうとしているのか>
◇「妄想」が破滅をまねく
「本当にこんなバカなこと、やる気なんですかねえ」
「解釈改憲の先にあるもの」について高村薫さん(61)に聞きたくて、大阪府吹田市の自宅にお邪魔した。だが高村さんは首をかしげ「本当に」と何度もつぶやく。「先にあるもの」どころか、手前の「集団的自衛権の必要性」からして「まったく理解ができません。それにそもそも、憲法って解釈するものなのでしょうかねえ」と、逆に問いを投げかけるのだ。
「今の日本って妄想だらけだと思うんです。妄想があらゆるところを覆っている……」。2時間弱の取材で「妄想」を24回も発した。
1997年にスタートした「この国はどこへ行こうとしているのか」シリーズ。その初回、グリコ・森永事件をモチーフに日本の企業社会の闇をえぐり出した小説「レディ・ジョーカー」の出版を前に登場してもらった。
この時、高村さんはバブル崩壊の影響とグローバリズムにさらされる日本社会について「これから『悪い時代』になっていく」と予見した。その後も「『悪い時代』が現実感を伴ってきた」(2006年)、「将来のことを考えるのがこんなにつらい時代が来るとは思わなかった」(12年)と、年を経るごとに重く、厳しい言葉で時代を評した。その高村さんから「妄想」という言葉が飛び出すのは初めてだ。
「集団的自衛権の問題一つとっても今の時代、世界のどこに世界一の軍事大国・米国を攻撃する国があるんですか。その米国を日本が守る? そんな事態が本当に起こると思っているのか。すべて安倍(晋三)さんたちの妄想としか思えません。しかも憲法は時代を超えて私たちの思考の基礎になるもの。その時々の人が解釈するものを憲法とは呼びません。解釈改憲こそ妄想の最たるものです」。困ったことに、その「妄想」が現実になろうとしている。
解釈改憲を急ぐのは尖閣問題で緊張する中国の存在が一つの理由らしい。「でも考えてみてください。中国との関係悪化にしても、もともとは日本の尖閣国有化に端を発したものです。それに安倍さんの靖国参拝が火を付けた。なのに『中国の出方は脅威だ』という空気の中で解釈改憲しようとしている。本来、日本の外交努力で解決できる問題のはずでこれも妄想です」
なぜ「妄想」がまかり通るようになったのか。そう問いかけると「最近、日本の経常収支の黒字が1兆円を切ったというニュースがあった。これは実に大変なことです」と意外な方向から切り返してきた。
12日に財務省が公表した13年度の日本の経常収支の黒字が、比較可能な85年度以降で初めて1兆円を下回り、7899億円になった。つい数年前まで10兆円以上あったにもかかわらず、だ。「すでに日本は貿易収支が赤字です。日本が国際的にどれだけもうけたかを示す経常収支ですらいよいよ赤字に陥る時代が近い。日本が右肩下がりの時代に入ったことが如実に示された」
経済が元気な時は、人々は未来や社会に希望を抱ける。でも右肩下がりの時代はどうか。高齢化が進み、企業も生産拠点を海外に移す。年金も仕事も不安だ。10年、20年後、自分が食べていけるかも見通せず、余裕がない。
「仮に安倍さんが『妄想』を並べ立てても、国が元気な時なら余裕があるから『妄想』だと気付くし、指摘もするし反対もする。今はみんな自分のことで手いっぱい。『妄想』と気付かないし、気付いても『まあいいや、アベノミクスで経済が良くなるなら』。そもそもみんな社会の先行きに関心がなくなった。安倍政権の言葉や政策に中身がないとうすうす分かっていても批判せず、良い方向に持っていく努力をしなくなった」
第一次大戦後、莫大(ばくだい)な賠償金にあえぐドイツの民衆がナチスの掲げる「妄想」に吸い寄せられ、戦前の日本が「大東亜共栄圏」という「妄想」に酔って無謀な戦争になだれ込んだ歴史と、今の日本を重ね合わせるのは大げさに過ぎるだろうか。
高村さんは視線を落とし「最悪の想定ですが、集団的自衛権が必要という妄想から覚める劇薬はある」という。
集団的自衛権行使が認められれば、米国の戦争に日本がコミットする機会が必ず来る。そうなれば自衛隊員に戦死者が出る。あるいは自衛隊員が他国の兵士らを殺害する。戦後初の事態に多くの日本人から拒否反応が出るだろう。「ここでやっと妄想から覚める。集団的自衛権で得たものは何もない、戦死者を生んだだけだ、と」。苦しそうに表情をゆがめた。
これ以外に「妄想」から覚める方法はないのか。高村さんは「日本社会に今一番必要なのはパブリック、つまり『公の心』です」と繰り返す。
普通、公共心とは「自分よりも社会の利益を優先する心」と解される。高村さんのいう「公の心」はもっと広い。「愛国心」とも違うし、例えばごみのポイ捨てをしないといった公共のエチケットとも違う。「民主主義を支える、当たり前のルール」に対する心がけや思いだ。例えば少数派の権利が守られているか、きちんと法的な手続きが順守されているか、他人の権利を侵害していないか、などに気を配る目線のことだ。
「その見方に立てば民衆だけでなく、今の政治にも『公の心』が全く欠けています。公人である安倍首相が率先して『自分の公約だから』と個人の情念で靖国神社に参拝する。『憲法は解釈で変えてはならない』のは高校生でも分かるのに、自分の妄想に従って変えようとする。解釈改憲の先には、いよいよ『公の心』が消えた荒廃した社会が広がっているのではないか」
高村さんは「この国」シリーズで「このままではこの国はつぶれる。だから政治を変えるしかない。そのためには選挙に行くしかない」と繰り返してきた。しかし「公の心」が社会から失われれば、それこそ政治への関心も薄れ、投票する有権者はますます減るのではないか。
「少なくとも、私は憲法を解釈で変えてもいい、と考える首相を頂くことに有権者はもっと恥じるべきだと思うのですが、違いますか」。淡々と語り続けていた声が高くなった。「結局、一人一人が社会を作っているのだ、という認識を取り戻す努力をすることに尽きる。だからやはり選挙には行く。社会で起きていることを注視する。そして子どもじゃないんだから、いくら自分のことだけで余裕がないといっても、『妄想』は『妄想』だと見抜く知恵を磨く。社会と自分の未来を守るには、これしかありません」
特効薬はない。地味で遠回りのようでも、社会の一員としての義務を果たすことが「妄想」を克服する一番の近道のようだ。【吉井理記】=おわり
==============
■人物略歴
◇たかむら・かおる
1953年大阪市生まれ。93年「マークスの山」で直木賞。著書に「太陽を曳く馬」「冷血」など。全国の地方紙などに「21世紀の空海」を連載中。
------------------------------------------------------------------------------
安倍政権は「妄想安定政権」だったのか。
妄想から覚めるには「自衛隊員に戦死者が出る。あるいは自衛隊員が他国の兵士らを殺害する」時しかない、という高村氏の意見には賛成できない。ほとんどの自衛隊員は、そんなことをするために自衛隊に入ったのではないと思う。自衛隊員を見殺しにすることはできない。
自衛隊員の中から「集団的自衛権の行使反対」の声が出しやすいように、私たちもがんばらねば。具体的に、どんなことができるのか。その知識がある人は、ぜひ教えていただきたい。
------------------------------------------------------------------------------
【RUN】
午後からバイトなので、午前中にちょっとだけ。
いつもの5kmコース、26分59秒。
あいかわらず体は重たいのだが、以前から吐き気のような感じが続いているのがちょっと気にかかる。
またエルちゃんダウンに行った。でも、今日は犬小屋から出てきてくれなかった。
--------------------------------------------------------------------------------
【今日のきく】
地球研前のお花畑で、すましているきく。
Posted by パオパオ パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2014年05月30日(金)
基地が地域の自発的なまちづくりを阻害する [時事]
◎毎日新聞5月30日朝刊・記者の目
[沖縄・普天間飛行場の移設問題] 政治部 上野 央絵(なかえ)
◇揺れる辺野古の民意
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先に名護市辺野古が浮上してから間もなく18年。移設反対を訴えて国と対峙(たいじ)する稲嶺進市長の下で、辺野古住民が揺れ動いている。住民の大半を占めるとされる「容認派」は、国を相手にした補償金要求などの「条件闘争」がままならないことに危機感を深める。一方、「反対派」はこうした容認派の焦りを背景に、自治組織として強力な決定権限をもつ辺野古区行政委員会が2010年に出した「条件付き容認」決議見直しに向けた動きを進める。「容認」と「反対」の分断状態にあった辺野古の民意は静かに流動化しつつある。
◇賛成と反対は「紙一重」の差
「(区内にある米軍キャンプ・)シュワブに移設されるだけではなく、(新たに)大きな騒音を伴うことになる。補償を求めるのは子や孫のためです」。容認派で辺野古区行政委員を務める雑貨・食品店経営、許田正儀(きょだまさよし)さん(64)は、移設に伴う補償金要求について、こう話した。12年秋に普天間に配備された米軍新型輸送機オスプレイは、訓練でしばしば辺野古の住宅地上空に飛来。住民は既に騒音を実感している。県内で「条件闘争している」と批判されることに対しては「本当はうるさいのは来ない方がいいと思ってるよ。でも政府と対峙して反対してもその通りいくものではない」と反論した。
区は今年4月14日、沖縄防衛局に対し、世帯ごとの補償金や米軍機が離着陸するヘリパッドの撤去などを求める要請文を提出した。しかし防衛局は補償の法的根拠がないことなどを理由に消極的。首相官邸にも要請するつもりだが「会ってもらえるかどうか。市長選前に移設推進派候補と訪問した時は対応が良かったが、負けてしまったから……」と危機感をにじませる。ある行政委員は「回答によっては反対闘争も辞さずだ」と漏らす。
一方の反対派は、従来の政治色が強い反対運動団体の看板を下ろし、区に容認決議を撤回させる道を模索する。
「賛成と反対は紙一重だと僕は思ってます。17年間やってきて」。移設に反対する地元住民の団体「命を守る会」を1997年に設立した金物店経営、西川征夫(いくお)さん(70)はこう話す。今年3月、会を解散した。選挙のたびに政治の動きに振り回され、地元住民の純粋な運動としては衰退したとの反省からだ。代わって「辺野古区民の会」を作り、住民を個別に説得して回る地道な活動を続ける。
目下の目標が、住民の1%にも満たない18人から成る区行政委員会がまとめた条件付き移設容認決議の見直しだ。46年ぶりの選挙で昨年3月誕生した区長は、移設受け入れについて「区民の総意で決める」と表明している。西川さんは「区長を支えるのが会の役割。会単独で反対闘争など行動をするつもりはないが、市長や区長が先頭に立つならば行動を起こす」と言う。
◇まちづくり阻害、根強い基地構造
今月11日の本紙朝刊ルポ「ストーリー」の取材で、こうした辺野古住民の民意の変化を感じた。一方で、基地が地域の自発的なまちづくりを阻害する根強い構造も見えた。
「ベトナム戦争以来、辺野古は寂れっぱなしですよ」。移設容認派の辺野古商工会長、飯田昭弘さん(66)は言う。辺野古商店街は50年以上前、シュワブ建設時に米軍の協力で開発されて以来、再開発は全くなされていない。シュワブを抱えることで辺野古に入る軍用地料は区行政委員会がため込み、まちづくりには向かわない。さらには普天間移設受け入れと引き換えの振興策の恩恵もほとんどない。わずか十数店舗となった米兵向けの飲食店の店主の中には「国から補償金が出ればすぐにでも出ていく」という人が何人もいる。飯田さんは「せめて再開発のきっかけになれば」と国の補償に期待する。
辺野古でのフィールドワークを04年から続ける明星大の熊本博之准教授(地域社会学)は「シュワブは仕方がないが、これ以上の負担は望まないというのが辺野古の声だ」と指摘する。
基地があるがゆえに新たな基地を押し付けられる一方で、国の金がいくら投じられても地域振興につながらない辺野古の現状は、沖縄全体が抱える米軍基地問題の縮図だ。沖縄にとって基地問題は、イデオロギーではなく住民個人の生活の問題。国が「条件闘争=受け入れありき」と、辺野古の民意にたかをくくっていると、住民こぞって反対に転じ、沖縄全体の反基地感情に火を付ける可能性もある。そうしないために、国は辺野古への移設断念を考えるべき時だと思う。
----------------------------------------------------------------------------------
◎沖縄タイムス5月15日
名護市長が出発「米国で沖縄の内実伝える」
【名護】名護市の稲嶺進名護市長は15日午前、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対などを米議員や市民らに直接訴えるため、正午過ぎ、米ニューヨークに向け出発した。稲嶺市長は那覇空港で記者団の取材に答え、「辺野古移設、県内移設反対の民意を受け止め、米国でできるだけ多くの人に会い、沖縄の内実をしっかり伝えていきたい」と述べた。
稲嶺市長は現地時間の18日まではニューヨークに滞在し、辺野古移設反対の声明を出した有識者らとの意見交換や、市民向けトークイベントなどを行う。
その後、ワシントンに移動し、元大統領補佐官や米下院議員らとの面談など実施。日本時間の24日夜に沖縄に戻る。
--------------------------------------------------------------------------------
◎沖縄タイムス5月22日
稲嶺名護市長が米で講演「住民犠牲許されない」
【ワシントン20日=伊集竜太郎】稲嶺進名護市長と玉城デニー衆院議員は20日夜、ワシントンのカフェでトークイベントを開いた。稲嶺市長は「米国のような大きな国では、住宅地の近くに基地があるのは考えられないと思う。しかし、沖縄という小さい島だと必ず住宅地の近くに基地を置くことになる」と述べ、基地被害の実態を語った。
稲嶺市長は「国益や国策といっても、そこに住む人たちを犠牲にして成り立つというのは、民主主義社会では許されない」と強調。玉城衆院議員は「新基地を造らないという政策をとることこそ、民主主義を尊重する政策になる」と提起した。
参加したキャンプ・シュワブにも駐留経験があるというフランク・ダナペラさん(73)は「沖縄は米兵の暴行事件も多い。米国民は、大統領や駐日米大使らに移設反対を訴える手紙を送るべきだ」と話した。
-----------------------------------------------------------------------------------
◎沖縄タイムス5月24日
辺野古移設「米も当事者」 名護市長帰国へ
ワシントン22日=伊集竜太郎】米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を訴えるため訪米中の稲嶺進名護市長らは22日、ワシントンのナショナル・プレスクラブで記者会見した。稲嶺市長は「基地を造るのは日本政府だが、使うのは米軍。この問題では米国も当事者だ」と訴え、移設問題に対して、米側からの取り組みを求めた。
自身が会談した議員や専門家の中には「(移設に向けた)手続きが進んでいるから仕方ないという人や、辺野古に造るのは厳しいんじゃないかという人もいた」と振り返った。
移設に向けた日本側の強硬姿勢や知事の埋め立て承認で「米国では強力な印象で受け止めていると思った」と振り返った。一方で、地元の根強い反対の中で「物事はそう、うまくいかないと言いたい。そのことをぜひ分かってほしい」と述べ、理解を求めた。
また、「いくら国防といえども、地域の一部の犠牲の上に成り立って進むものではない」と強調。「名護市民は孤立していない。世界中からも注目され、応援してもらっている。それを受けて移設反対に向け、市民の代表として前に立って闘いたい」と気持ちを新たにした。
稲嶺市長らは同日、米議会調査局(CRS)日本研究グループや下院議員補佐官とも面談した。稲嶺市長は現地時間の23日、ワシントンを出発し、日本時間の24日夜、帰沖する。
--------------------------------------------------------------------------------
◎朝日新聞5月22日朝刊・声
沖縄 米国民への訴えに意義
プログラマー 大畑 靖夫(熊本県 58)
米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を訴えるため訪米した稲嶺進・沖縄県名護市長が、ニューヨークでの市民集会で沖縄の現状を伝えたことに日本国民として大変心強く思った。この行動は、安倍晋三首相の米国との軍事行動に偏った外交姿勢とは正反対に思える。
歴代の日本の首相が米国民にこれまで何をアピールしてきただろうか。少なくとも、日米安保条約の名の下に置かれる米軍基地の、沖縄県民への過重な負担の実情については直接語ってこなかったのではないか。
一方、米国政府が、自国の国益を優先するのは当たり前であり、米軍基地を沖縄に置き続けることが米国の国益にかなっていれば、在日米軍基地の国外移転など検討するはずもない。
それを考えると、稲嶺市長が米軍基地が名護市民の平穏な暮らしを脅かす要因になっていると、米国市民に直接訴えたのは意義深い。
同時にこの行動は、憲法9条の非戦の理念を広めることにもつながるのではないか。本来、日本政府が一番にやるべきことを沖縄の一市長が米国に出向き、訴えた意義は大きい。
--------------------------------------------------------------------------------
最後に紹介させてもらった朝日新聞の投書欄の大畑さん。この人の言葉に尽きる。「沖縄の一市長が米国に出向き、訴えた意義は大きい」。
私と同い年の大畑さん。いいとこ見てますねえ。会ってお話したいくらいです。
稲嶺市長さんも「まちづくりに基地は不要」とおっしゃっている。
これだけ行動力があり、フルマラソンを完走できる体力もある人だから、名護市長にとどまらず次期沖縄県知事候補にしてもいいくらいじゃないでしょうか。
Posted by パオパオ パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2014年05月26日(月)
「だれにもまもっていらん!」 [時事]
◎朝日新聞5月20日朝刊・社説余滴
1分半に1度かけられる命 高橋 純子
計21回。1分35秒に1回。
安倍首相が集団的自衛権の行使に向け一歩を踏み出した15日の会見で、国民の「命」を「守る」と言った回数だ。
首相の「命を守る」の裏側には、自分ではない誰かの「命をかける」が張り付いている。1分35秒に1回、その誰かと死の距離は近づいている。問われているのは、憲法9条の歯止めを外して、日本を「戦争をする国」にするのか。しかもその歯止めを、閣議決定による政府の憲法解釈変更で外していいのかだ。
ところが首相はこの問いに正面から答えようとしない。「お父さんやお母さんやおじいさんやおばあさん、子どもたちを助けられない。それでいいのか」といった類いの弁を繰り返すばかりだ。
レトリックというよりはトリック。覚悟も熱意も感じられない。これが、日本の平和国家としての歩みを根本から変えようとしている最高権力者の会見か。国民にわかってもらうことを重視したという。だとすると政権が想定する国民像は、論理的な説明よりも、お涙ちょうだいが効く人たちだということなのか。
首相は「敵」を批判したり、嘲笑したりするのは得意だが、他者に何かを伝えるのは下手だ。反対する人を説得しようという気がそもそもないからだろう。「身内」に「いいね!」と言ってもらい、最後は数の力で押し切る。会見には、首相のそのような政治観がにじんでいた。
「命を守る」。首相がそう連呼していた時、首相官邸の外では、集まった約2千人が「憲法守れ」と抗議の声をあげていた。首相が言うところの、おじいさんもおばあさんも、お父さんもお母さんもいる。赤ちゃんを乗せた赤いベビーカーの上には、「解釈改憲断固反対」のプラカードが置かれていた。
これまで何度となく聞いてきた「憲法守れ」「戦争反対」は、どこか内実を伴わないスローガンとして響いていたと、私は思う。しかしこの日の官邸前は、少なくとも首相会見よりは現実と取り結び、重みを持っていた。それだけ、日本の「現在地」が動いてしまったということなのだろう。
会見場に置かれた首相肝いりのパネルには、赤ちゃんを抱く母親に不安げな表情で寄り添う子どものイラストが描かれていた。
だが不安な表情で見つめられているのは誰か。首相、あなた自身なのではないか。
(たかはしじゅんこ 政治社説担当)
-------------------------------------------------------------------------------
「だれにもまもっていらん!」
これは愛すべきうちのヨメさんの名言。
「守る守るって、あんたらみたいなきっしょくわるい人ら、そばにもよってほしないわー。」
この「きっしょくわるい人」とは、安倍さん、石原さん、橋下さん・・・などなどでしょうか。「守る」なんて1回も言ったことないけど、パオパオも入っているんでしょうね。
Posted by パオパオ パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
2014年05月23日(金)
司法は生きていた [時事]
◎毎日新聞5月22日朝刊
福井・大飯原発:差し止め判決
「司法は生きていた」 原告ら200人歓声
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町、運転停止中)の運転差し止めを命じた21日の福井地裁(樋口英明裁判長)判決は、東京電力福島第1原発事故の被害の大きさに触れ、「原発に求められる安全性、信頼性は極めて高度」とし、現在の安全対策は「楽観的な見通しの上で成り立つ脆弱(ぜいじゃく)なもの」と切り捨てた。【村山豪、山衛守剛、浜中慎哉、松野和生、近藤諭】
地裁にはこの日、原告や支援者ら約200人が集結。判決後、原告の男性が「司法は生きていた」と書かれた紙を地裁前で掲げると歓声が上がった。福井市のイラストレーターで原告の一人、村井みきさん(34)は「司法に良心が残っていたと感じさせてくれる判決だった。福島の事故を知っているのに、福井で原発が動いてしまっては福島の人に顔向けできないような気がしていた。何かが変わるきっかけになってほしい」と話した。40年以上前から脱原発運動に関わる大阪府高槻市の水戸喜世子さん(78)も原告で、「住民側の目線に立ったパーフェクトな判決。日本だけでなく世界中に誇れるもの」と涙を流した。「脱原発弁護団全国連絡会」共同代表の河合弘之弁護士も「(判決は)脱原発のバイブルになり得るもので、全国の裁判所や市民、政治家に広めたい」と手応えを語った。
一方で、福井県おおい町の住民は複雑な表情をみせた。「信じられない判決。会社の将来が全く見えなくなってしまった」。関西電力から大飯原発の仕事を請け負う町内の設備関連会社の社長は感想を漏らした。「関電には控訴してほしいが、裁判が長引くのではないかと心配だ。先行きが見えなくなり、地元業者の仕事も減っていく。従業員の生活がかかっており、何としても再稼働してほしい」と訴えた。町内で民宿を営む50代男性は「政府が原発再稼働を進める方針を示す中で踏み込んだ判決。(原発の危険性を)裁判所が考えるようになったという印象で、地元にとってはショックだ」と話した。
再稼働に反対する同町の住職、宮崎慈空さん(70)は「画期的な判決で大変喜ばしい。裁判の経過を見ても関電の反論は誠実でない。原発の危険性を客観的に認識してもらえた」と歓迎した。
おおい町の中塚寛町長は「司法の判断は粛々と受け止めざるを得ない」と話した上で「規制基準に基づく審査を注視するとともに、(関電側の)控訴も予測されるので、見守りたい」。西川一誠・福井県知事は「行政の立場から言うことはない」とした上で「原子力は重要なエネルギー源」と訴えた。
判決を知らせるテレビのニュース速報が流れた直後、大阪市北区の関西電力本店の広報部では、十数人の社員が一斉に立ち上がり、テレビ画面にくぎ付けに。問い合わせの電話も相次ぎ、社員は携帯電話を片手に情報収集に追われた。
関電のある幹部は「差し止め判決は想定していなかった。ただでさえ規制委の安全審査が滞っているのに、再稼働への悪影響は避けられない」と険しい表情を浮かべた。
◇同種訴訟原告「私たちも」
全国で原発の運転差し止めや廃炉などを求めて係争中の原告団からは「追い風になる」と歓迎の声が上がった。
「国の裁量権に委ねず、司法自らが原発の危険性を判断したことに意味がある」。日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の運転差し止め訴訟の原告共同代表を務める大石光伸・常総生協副理事長(56)は、こう強調する。四国電力伊方原発(愛媛県)の差し止め訴訟の原告共同代表で、福島県出身の須藤昭男さん(72)も「私たちも司法の独立に懸けて闘ってきた。何としても勝訴したい」と意気込んだ。
原発回帰の流れに一石を投じた結果を喜ぶ声も。青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場などの廃止を求める訴訟の原告団代表の浅石紘爾(こうじ)弁護士は「原子力規制委員会の判断を待たずに結論を出したのは驚きであり、画期的。他の裁判にも大きな影響を与えると思う」と述べ、「久々に留飲が下がった」と声を弾ませた。
判決は、大飯原発から250キロ圏内の居住者に危険があると認めた。
中部電力浜岡原発(静岡県)の運転差し止め訴訟3件に原告代理人として加わる北村栄弁護士は「浜岡原発から250キロ圏内には名古屋だけでなく東京も入る。多くの人に関係のある問題だと分かる」と指摘した。
再稼働1号となる可能性が高い九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の運転差し止め仮処分を準備している「原発なくそう!九州川内訴訟」原告団の白鳥努・弁護団事務局長は、判決が「基準地震動を超える地震が大飯原発に到達しないという根拠はない」などと指摘したことに触れ「川内原発にも当てはまる。大いに勇気づけられた」と話した。【まとめ・狩野智彦】
◇福島の市民「希望の判決」
東京電力福島第1原発事故以降、放射性物質などに苦しめられてきた福島県民からはさまざまな反応が出た。
ラジオを通じて原発情報を発信し続けている「ラジオ福島」チーフアナウンサーの大和田新(あらた)さん(59)=福島市在住=は「原発事故から3年以上たってもいまだにコントロールできていない。ようやく事故を教訓とした判断を司法が示した」と評価する。大和田さんは原発事故後、一睡もせずにマイクに向かった経験がある。県民の現在進行形の苦しみを番組や講演会などで訴えてきたが、安倍政権は原発再稼働一辺倒。そこへ今回の判決がもたらされ「脱原発を求める多くの世論がこの判決をもたらした」と語った。
「判決はこの国の新たな指針になるのではないか」と話すのは福島県南相馬市で学習塾を経営する番場さち子さん(53)。原発事故後、100人以上いた塾生が避難してゼロとなり、経営が行き詰まって自己破産を勧められたこともある。「原発を他国に売ろうとしたり、再稼働を進めようとしたりする政府を理解できず、日本という国に不安を抱いている人にとって『希望の判決』だ」と話す。しかし、塾生の親に原発で生計を立てている人もおり、複雑な心境という。【坂根真理、横田香奈】
◇「理想的すぎる」「高評価できる」 識者賛否
「原子力防災」の著書がある松野元・元四国電力社員は「判決の結論は一理あるが、『250キロ圏内(の危険性指摘)』などあまりに理想的な内容で何の役にも立たない」と、今回の判決に厳しい。「原子力規制委の再稼働基準に対する反論などがあれば良かったが、具体性がなく、原発訴訟の歴史も踏まえていない」と指摘した。
一方、奥平康弘・東京大名誉教授(憲法学)は「憲法上、危険をはらむ経済活動より国民の安全の方が重要という判断で、高く評価できる」と話す。
2006年に北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを命じた金沢地裁判決で裁判長を務めた井戸謙一弁護士も「福島の原発事故を機に、原子力の安全性に対する司法判断は大きく変わると思っていた。今回の判決はそれが形になった第一弾といえる」と話した。【山田奈緒】
◇すばらしい判決 菅元首相も傍聴
関西電力大飯原発訴訟の判決は、菅(かん)直人・元首相も傍聴に駆けつけた。原発事故時に首相を務め、現在は一衆院議員として脱原発を訴えている菅元首相は閉廷後、取材に応じ、「すばらしい判決。国会における(原発の)規制基準の議論にも大きな影響が出ると思う。全ての原発を順次廃炉にするという政策に変わるべきだ」と述べた。【山衛守剛】
==============
◇原発運転差し止めなどを求め係争中の主な訴訟
原発名 裁判所 提訴年月
泊 札幌地裁 11年11月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
大間 函館地裁 10年 7月
東京地裁 14年 4月
※原告は北海道函館市
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
東海第2 水戸地裁 12年 7月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
柏崎刈羽 新潟地裁 12年 4月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
志賀 金沢地裁 12年 6月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
美浜・大飯・高浜 大津地裁 13年12月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
敦賀 大津地裁 11年11月
※仮処分申請
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
大飯 大阪地裁 12年 6月
京都地裁 11月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
浜岡 静岡地裁浜松支部 11年 5月
静岡地裁 7月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
島根 松江地裁 13年 4月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
伊方 松山地裁 11年12月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
玄海 佐賀地裁 11年12月
佐賀地裁 12年 1月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
川内 鹿児島地裁 12年 5月
-------------------------------------------------------------------------------
「司法は生きていた」という垂れ幕にしびれてしまった。ええのん用意してましたねえ。かなり庶民感覚に近い判決が出たと思う。
これは言いかえれば、「憲法は生きていた」ということでもある。
この流れで、私は「憲法九条も生きていた」という世の中にしていきたいと思う。。
判決文の中でも、私は以下の二つの部分に注目した。
すごく分かりやすいので、ぜひ読んでください。
【求められる安全性】
原発の稼働は法的には電気を生み出す一手段である経済活動の自由に属し、憲法上は人格権(13条、25条)の中核部分よりも劣位に置かれるべきだ。自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広範に奪われる事態を招く可能性があるのは原発事故以外に想定しにくい。具体的危険性が万が一でもあれば、差し止めが認められるのは当然だ。
【国富の損失】
被告は原発稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いという問題を並べて論じるような議論に加わり、議論の当否を判断すること自体、法的には許されない。原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の損失だ。
被告は、原発稼働がCO2(二酸化炭素)排出削減に資すると主張するが、福島原発事故はわが国始まって以来最大の環境汚染であり、原発の運転継続の根拠とすることは甚だしく筋違いだ。
※日本国憲法第13条ーーすべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
日本国憲法第25条ーーすべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
Posted by パオパオ パーマリンク トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
【 過去の記事へ 】