2014年05月30日(金)
基地が地域の自発的なまちづくりを阻害する [時事]
◎毎日新聞5月30日朝刊・記者の目
[沖縄・普天間飛行場の移設問題] 政治部 上野 央絵(なかえ)
◇揺れる辺野古の民意
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先に名護市辺野古が浮上してから間もなく18年。移設反対を訴えて国と対峙(たいじ)する稲嶺進市長の下で、辺野古住民が揺れ動いている。住民の大半を占めるとされる「容認派」は、国を相手にした補償金要求などの「条件闘争」がままならないことに危機感を深める。一方、「反対派」はこうした容認派の焦りを背景に、自治組織として強力な決定権限をもつ辺野古区行政委員会が2010年に出した「条件付き容認」決議見直しに向けた動きを進める。「容認」と「反対」の分断状態にあった辺野古の民意は静かに流動化しつつある。
◇賛成と反対は「紙一重」の差
「(区内にある米軍キャンプ・)シュワブに移設されるだけではなく、(新たに)大きな騒音を伴うことになる。補償を求めるのは子や孫のためです」。容認派で辺野古区行政委員を務める雑貨・食品店経営、許田正儀(きょだまさよし)さん(64)は、移設に伴う補償金要求について、こう話した。12年秋に普天間に配備された米軍新型輸送機オスプレイは、訓練でしばしば辺野古の住宅地上空に飛来。住民は既に騒音を実感している。県内で「条件闘争している」と批判されることに対しては「本当はうるさいのは来ない方がいいと思ってるよ。でも政府と対峙して反対してもその通りいくものではない」と反論した。
区は今年4月14日、沖縄防衛局に対し、世帯ごとの補償金や米軍機が離着陸するヘリパッドの撤去などを求める要請文を提出した。しかし防衛局は補償の法的根拠がないことなどを理由に消極的。首相官邸にも要請するつもりだが「会ってもらえるかどうか。市長選前に移設推進派候補と訪問した時は対応が良かったが、負けてしまったから……」と危機感をにじませる。ある行政委員は「回答によっては反対闘争も辞さずだ」と漏らす。
一方の反対派は、従来の政治色が強い反対運動団体の看板を下ろし、区に容認決議を撤回させる道を模索する。
「賛成と反対は紙一重だと僕は思ってます。17年間やってきて」。移設に反対する地元住民の団体「命を守る会」を1997年に設立した金物店経営、西川征夫(いくお)さん(70)はこう話す。今年3月、会を解散した。選挙のたびに政治の動きに振り回され、地元住民の純粋な運動としては衰退したとの反省からだ。代わって「辺野古区民の会」を作り、住民を個別に説得して回る地道な活動を続ける。
目下の目標が、住民の1%にも満たない18人から成る区行政委員会がまとめた条件付き移設容認決議の見直しだ。46年ぶりの選挙で昨年3月誕生した区長は、移設受け入れについて「区民の総意で決める」と表明している。西川さんは「区長を支えるのが会の役割。会単独で反対闘争など行動をするつもりはないが、市長や区長が先頭に立つならば行動を起こす」と言う。
◇まちづくり阻害、根強い基地構造
今月11日の本紙朝刊ルポ「ストーリー」の取材で、こうした辺野古住民の民意の変化を感じた。一方で、基地が地域の自発的なまちづくりを阻害する根強い構造も見えた。
「ベトナム戦争以来、辺野古は寂れっぱなしですよ」。移設容認派の辺野古商工会長、飯田昭弘さん(66)は言う。辺野古商店街は50年以上前、シュワブ建設時に米軍の協力で開発されて以来、再開発は全くなされていない。シュワブを抱えることで辺野古に入る軍用地料は区行政委員会がため込み、まちづくりには向かわない。さらには普天間移設受け入れと引き換えの振興策の恩恵もほとんどない。わずか十数店舗となった米兵向けの飲食店の店主の中には「国から補償金が出ればすぐにでも出ていく」という人が何人もいる。飯田さんは「せめて再開発のきっかけになれば」と国の補償に期待する。
辺野古でのフィールドワークを04年から続ける明星大の熊本博之准教授(地域社会学)は「シュワブは仕方がないが、これ以上の負担は望まないというのが辺野古の声だ」と指摘する。
基地があるがゆえに新たな基地を押し付けられる一方で、国の金がいくら投じられても地域振興につながらない辺野古の現状は、沖縄全体が抱える米軍基地問題の縮図だ。沖縄にとって基地問題は、イデオロギーではなく住民個人の生活の問題。国が「条件闘争=受け入れありき」と、辺野古の民意にたかをくくっていると、住民こぞって反対に転じ、沖縄全体の反基地感情に火を付ける可能性もある。そうしないために、国は辺野古への移設断念を考えるべき時だと思う。
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◎沖縄タイムス5月15日
名護市長が出発「米国で沖縄の内実伝える」
【名護】名護市の稲嶺進名護市長は15日午前、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対などを米議員や市民らに直接訴えるため、正午過ぎ、米ニューヨークに向け出発した。稲嶺市長は那覇空港で記者団の取材に答え、「辺野古移設、県内移設反対の民意を受け止め、米国でできるだけ多くの人に会い、沖縄の内実をしっかり伝えていきたい」と述べた。
稲嶺市長は現地時間の18日まではニューヨークに滞在し、辺野古移設反対の声明を出した有識者らとの意見交換や、市民向けトークイベントなどを行う。
その後、ワシントンに移動し、元大統領補佐官や米下院議員らとの面談など実施。日本時間の24日夜に沖縄に戻る。
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◎沖縄タイムス5月22日
稲嶺名護市長が米で講演「住民犠牲許されない」
【ワシントン20日=伊集竜太郎】稲嶺進名護市長と玉城デニー衆院議員は20日夜、ワシントンのカフェでトークイベントを開いた。稲嶺市長は「米国のような大きな国では、住宅地の近くに基地があるのは考えられないと思う。しかし、沖縄という小さい島だと必ず住宅地の近くに基地を置くことになる」と述べ、基地被害の実態を語った。
稲嶺市長は「国益や国策といっても、そこに住む人たちを犠牲にして成り立つというのは、民主主義社会では許されない」と強調。玉城衆院議員は「新基地を造らないという政策をとることこそ、民主主義を尊重する政策になる」と提起した。
参加したキャンプ・シュワブにも駐留経験があるというフランク・ダナペラさん(73)は「沖縄は米兵の暴行事件も多い。米国民は、大統領や駐日米大使らに移設反対を訴える手紙を送るべきだ」と話した。
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◎沖縄タイムス5月24日
辺野古移設「米も当事者」 名護市長帰国へ
ワシントン22日=伊集竜太郎】米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を訴えるため訪米中の稲嶺進名護市長らは22日、ワシントンのナショナル・プレスクラブで記者会見した。稲嶺市長は「基地を造るのは日本政府だが、使うのは米軍。この問題では米国も当事者だ」と訴え、移設問題に対して、米側からの取り組みを求めた。
自身が会談した議員や専門家の中には「(移設に向けた)手続きが進んでいるから仕方ないという人や、辺野古に造るのは厳しいんじゃないかという人もいた」と振り返った。
移設に向けた日本側の強硬姿勢や知事の埋め立て承認で「米国では強力な印象で受け止めていると思った」と振り返った。一方で、地元の根強い反対の中で「物事はそう、うまくいかないと言いたい。そのことをぜひ分かってほしい」と述べ、理解を求めた。
また、「いくら国防といえども、地域の一部の犠牲の上に成り立って進むものではない」と強調。「名護市民は孤立していない。世界中からも注目され、応援してもらっている。それを受けて移設反対に向け、市民の代表として前に立って闘いたい」と気持ちを新たにした。
稲嶺市長らは同日、米議会調査局(CRS)日本研究グループや下院議員補佐官とも面談した。稲嶺市長は現地時間の23日、ワシントンを出発し、日本時間の24日夜、帰沖する。
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◎朝日新聞5月22日朝刊・声
沖縄 米国民への訴えに意義
プログラマー 大畑 靖夫(熊本県 58)
米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を訴えるため訪米した稲嶺進・沖縄県名護市長が、ニューヨークでの市民集会で沖縄の現状を伝えたことに日本国民として大変心強く思った。この行動は、安倍晋三首相の米国との軍事行動に偏った外交姿勢とは正反対に思える。
歴代の日本の首相が米国民にこれまで何をアピールしてきただろうか。少なくとも、日米安保条約の名の下に置かれる米軍基地の、沖縄県民への過重な負担の実情については直接語ってこなかったのではないか。
一方、米国政府が、自国の国益を優先するのは当たり前であり、米軍基地を沖縄に置き続けることが米国の国益にかなっていれば、在日米軍基地の国外移転など検討するはずもない。
それを考えると、稲嶺市長が米軍基地が名護市民の平穏な暮らしを脅かす要因になっていると、米国市民に直接訴えたのは意義深い。
同時にこの行動は、憲法9条の非戦の理念を広めることにもつながるのではないか。本来、日本政府が一番にやるべきことを沖縄の一市長が米国に出向き、訴えた意義は大きい。
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最後に紹介させてもらった朝日新聞の投書欄の大畑さん。この人の言葉に尽きる。「沖縄の一市長が米国に出向き、訴えた意義は大きい」。
私と同い年の大畑さん。いいとこ見てますねえ。会ってお話したいくらいです。
稲嶺市長さんも「まちづくりに基地は不要」とおっしゃっている。
これだけ行動力があり、フルマラソンを完走できる体力もある人だから、名護市長にとどまらず次期沖縄県知事候補にしてもいいくらいじゃないでしょうか。
Posted by パオパオ トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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