2011年01月03日(月)
箱根駅伝・藤井勘太選手 [マラソン評論]
「かんたくーん、しっかり! かんたくーん! かんたくーん!」
鶴見中継所でたすきを受け取り、最終区10区を走り出した藤井勘太選手(東海大)。
目の前を通り過ぎる数秒のうちに、かけられた言葉はただこれだけ。しかし、私にしては注意されることも恐れず車道に一歩出て、大声を出すことができた。(少しは耳に届いたかな。)
藤井勘太君のお父さんと私は同郷。(私の姉と勘太君のお父さんは小中同級生。)心から応援できる選手が箱根駅伝に出るからには、応援に行かずにはおられない。
ただ、箱根駅伝は当日エントリー変更が認められている。もちろんその本人には前もって告げてあるとは思うのだが、私たち部外者には知るすべもない。
今朝は早く起きて、「箱根駅伝復路エントリー変更」で検索してみたがさっぱり分からず。藤井勘太選手がエントリーされていた10区は、6チームがエントリー変更をしたことだけは分かった。その6チームの中に東海大学が入っていませんように・・・。
結局ネットのほうでは「エントリー変更」が見つけられず。7時40分ごろ、やっとテレビで復路のメンバーが映し出された。
「東海大学 10区 藤井勘太」
よっしゃー。いざ、10区へ。
10区のコースもほとんど調べず、お金とカメラとケイタイだけ持って家を飛び出す。京都駅のJRの「みどりの窓口」で聞いて乗車券を買う。
新横浜駅へ向かう新幹線の中からヨメさんにメール。鶴見中継所への行き方を聞くと、「京急・鶴見市場駅」が一番近いとのこと。私はすべてJRの乗車券でそろえてしまったのでややこしいことになった。鶴見中継所→品川駅前→大手町ゴールという計画はむずかしそうだ。
しかし、新横浜駅から鶴見市場駅へはヨメさんから送ってもらったメールのおかげでまちがいなく行くことができた。
中継所は駅からすぐ。私が到着したのは先頭が来る30分ほど前だったので、まだそんなに人は多くなかった。でも時間がたつにつれ人が多くなり、先頭が来るかというころには歩道はすごい人の壁になっていた。
私が陣取ったのは、中継所から200mほど先のところ。
私の横には、4歳くらいの男の子と美人お母さん。ワンセグケイタイを見ておられたので、随時情報を教えてもらっていた。
「どちらかの大学を応援しておられるんですか。」
「いえ、最近この近くに引っ越してきたので、せっかくなんで見に来たんです。」
「だったら、ぜひ東海大学を応援してください。」
「東海大学は、水色でしたね。」
「そうそう。」
「どうして東海大学の応援を?」
「10区を走る子が、うちの近所の子なんですよ。元々は京都なんですけど・・・。」
「えっ、京都から応援に来られたんですか。」
「そうなんです。当日エントリー変更がないかを確かめて、朝新幹線に乗って・・・。」
「応援します、東海大学。お名前は?」
「藤井勘太です。」
「パンダ? パンダ?」と小さな男の子。
「○○君、そんなこと言っちゃダメ。ちゃんと、『かんたくん、がんばれ』って言おうね。」
「パンダ、パンダ、・・・」
(走ってたら、「パンダ」も「かんた」に聞こえるかも・・・。)
そんなことをしゃべっている間に先導するパトカーが見えてきた。そこに続く10区の選手。
先頭は、早稲田大学。
2位通過、東洋大学。
3位通過、駒澤大学。
来たー、4位通過、東海大学・藤井勘太選手。
「絶対に車道には出ないように」とそれまで何度も注意されていた。でも、自然に一歩前へ。
「かんたくーん、しっかり! かんたくーん! かんたくーん!」
応援できるのは、ほんの一瞬。でも、自分でもびっくりするくらいの大声が出せた。
さあ、次の応援場所へ。
鶴見市場駅に戻り、JR東神奈川駅に向かおうと駅のホームで待っていると「こうじ君、こうじ君」と呼ぶ声。向かいのホームに目をやると、なんと藤井勘太君のご両親。
「応援に来てくれたんやねえ。」
「はい。今日の朝出てきました。」
「ありがとう。このあとは?反対向きとちがうん?」
「JRの券こうてしもたし、こっち向きなんですわ。ゴールに行かはんのですよね。」
「そう。」
まさか、こんなたくさんの人ごみの中で藤井勘太君のご両親と出会い話ができるとは思ってもみなかった。よかった、よかった。
来た電車に乗ってから気づいたのだが、買ってしまったJRの券は無視して、そのまま京急で品川に向かったほうがよっぽど早かった。品川での応援は断念し、東京駅へ。
ゴール大手町は東京駅から歩いてすぐ。
しかし、ここまで来るのに手間取って、結局東海大学はすでにゴールしていた。近くの方にお聞きすると、東海大学は第4位でゴール。藤井勘太選手は、私が見た鶴見中継所から23kmほど、誰にも抜かれずにゴールまでがんばったのだ。
あとで聞いたのだが、10区区間4位の力走。4回生の最後の最後に花が開いたね。おめでとう。
藤井勘太君のおばあちゃん(うちの実家のお隣り)がいつも言っておられた。
「勘太はなあ、ほんまに走るのが大好きでなあ、ヒマさえあったら走っとるわ。ようあんだけ走れるもんやといっつも感心してんにゃ。」
私もそんな子にこそ箱根駅伝に出てもらいと思っていたが、最後に実現し、私も目の前で応援できたのでもう言うことなし。
私が到着した時には、15位くらいのチームがゴールするところだった。ただ、人垣が何重にもなっていて前が見えない。上の写真はミニ脚立を持ってきておられた方にお借りして撮った一枚。
人垣の後ろにかわいいワンちゃんがいたので写真を撮らせてもらった。
「じん・オス・9歳・ゴールデン」
顔がラプラドールに見えたので、「ラプラドールですか」と聞いたら、「よく言われるんですけど、毛並みはゴールデンでしょ」とのこと。ほんとにそうでした。
後ろのほうにいるとまったく見えないのだが、時折「おー」という歓声が沸きあがるので選手が帰って来たのが分かる。この歓声を聞くだけでも、この場に来た値打ちがあると思った。
20チームすべてがゴールすると、人が引けてやっと前が見えた。
すぐ前にいた黄色のブレーカーを来た走路員が目にとまった。
「すいません、写真撮らせてもらっていいですか。」
「えっ、僕らですか。」
「はい。無償で交通費もなしで走路員しておられるんでしょう。それをみんなに知ってもらいたくて。撮りますよー。」
「ありがとうございます。」
「ブログにこの写真載せたいんですけど、いいですか。」
「はい、お願いします。」
「このブログですし・・・」と言って私の名刺を渡した。
「えっ、京都キャロットさん。いつも買わせてもらってました。」
「えっ、どこの大学ですか。」
「上武大学です。僕は武と言います。」
「わー、上武大学やったん。武君、ありがとうね。ブログに書いとくし・・・。そやけどみんなえらいなあ。」
こんなところで、うちのお客様にお会いできるなんて。
藤井勘太君の応援は一ヶ所でしかできなかったけど、いつも買っていただいている上武大学の子たちとも話せて本当によかった。私にとっては思い出に残る箱根駅伝の応援になった。
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◎あるツイッターより
【RT拡散希望】箱根駅伝をご覧になる皆さん。レースは「無償&交通費支給なし」で正月休みを返上している学生補助員、一般補助員によって支えられています。黄色のジャンパーを着た沿道の補助員にもささやかな声援をお願いしますm(_ _)m
Posted by パオパオ トラックバック ( 0 ) コメント ( 2 )
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コメント
asaasaさん、コメントありがとう。
藤井勘太君は、ターコおばさんの元同級生の息子さんです。「京都キャロット」にも何度も来てくれているし、通販も利用してくれています。
まじめに競技に取り組む姿は誰もが認めるところ。そんな子が4年間一生懸命やってきて表舞台に出られないなんて・・・、と思っていたのですが最後の最後に日が当たりました。正直、区間4位にはびっくりです。ほんまによかった。
本当に心から応援できる選手がいると、こちらの気持ちも全然ちがう。こんな機会を与えてくれた藤井勘太君には、ただただ感謝です。
めっちゃすごい!!!おっちゃんが。
その熱意に感心します。箱根駅伝おもしろかったね。
一生懸命な人は 私にも元気をくれる。
おっちゃんのその行動力も 私を元気にします♡