パオパオだより

2010年09月02日(木)

「攻められたら死ぬ」 [平和]

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叡電・京都精華大前駅付近の黒猫ちゃん

◎毎日新聞8月30日夕刊より

 今、平和を語る:作家・日本ペンクラブ会長、阿刀田高さん

 ◇「攻められたら死ぬ」が9条精神−−阿刀田高さん(75)

  社団法人・日本ペンクラブは今秋、創立75年を迎える。平和を希求し、表現の自由に対するあらゆる弾圧に反対してきた。阿刀田高会長(75)は「ゆるやかな反体制派」を自任し、平和と表現の自由を守るには覚悟がいると語る。26年ぶり3度目の国際ペン東京大会を前に、阿刀田会長に聞いた。<聞き手・広岩近広>

 ◇平和と表現の自由、覚悟して守れ
 −−まず、「ゆるやかな反体制」とは。

 阿刀田 現在、日本ペンクラブには約2000人の会員がいますが、皆が同じ方向を向いているわけではありません。いろいろな考え方を持っていて当然ですし、国際的な活動も反体制ばかりではやっていけない。しかし、いまの世の中を考えると、そうそう体制にべったりというわけにもまいりません。日本ペンクラブは良心と良識にかけて「ゆるやかな反体制」を維持しますが、時と場合によっては「厳しい反体制」の旗を掲げます。

 −−厳しい事例は。

 阿刀田 一例をあげると、03年に当時の小泉純一郎首相が自衛隊をイラクに派遣したときです。自衛隊についての考え方は、会員のなかで種々の意見があると思います。ですが、自衛隊をイラク駐留の多国籍軍に参加させるとなると多くの会員が許し難く思い、ひとつのコンセンサスが得られると考えました。そこで日本ペンクラブとして、憲法の不戦原則に背くので断固として反対する、との声明を出したのです。

 国家にとって重要な問題が持ち上がったとき、文学者は意見の対立を乗り越えて、つまり小異を捨て大同につくと申しますか、そういう行動をとるのがこの団体だと思っています。

 −−このとき日本ペンクラブが45人の会員に呼びかけて緊急出版した「それでも私は戦争に反対します」(平凡社)に、阿刀田さんは短編「神々は笑う」を寄せられました。自衛隊が軍隊になり、ついには徴兵制度が始まったという近未来はリアルでした。

 阿刀田 軍隊は戦争する組織ですから、戦場で死ぬこともあります。そうなったら日本では志願兵なんて出てきませんよ。おのずと徴兵制が敷かれます。徴兵制になったら、貧しい人や恵まれない人たちが兵隊にとられる。いつの時代でも変わりません。

 私は10歳のときに長岡大空襲に遭い、強いと教えられた日本の軍隊が国を守ってくれないことを思い知らされました。広島、長崎の惨禍も防ぐことができなかった。だから軍隊を持てば国を守れると言われても、どこまで信頼したらいいのかと思ってしまう。

 −−一方で、軍備を持つ国から攻め込まれたらどうするのか、と必ず問われます。

 阿刀田 私の答えは決まっています。そのときは死ぬんです、とはっきり申し上げております。

 実は私たちの世代は戦時下の子ども時代、国家のために死ぬんだと教えられました。だから、やれ本土決戦だと竹やりを持つようになると、敵国が攻めてきたら死ぬ覚悟でした。しかし戦争が終わって日本国憲法が施行されたとき、戦争の放棄をうたい軍隊を持たないというのだから、なんと素晴らしい決心だろうと感動した覚えがあります。

 私は、人を殺すくらいならば、自分が死ぬ道を選びたい。特別な倫理ではなく、同じ倫理観の持ち主はきっといるはずです。だから私は命がけで平和を守り、それでも攻撃を受けたら、丸腰で死ぬんだと覚悟を決めています。攻められたら死ぬんです、という覚悟が憲法9条の精神だと思います。私たちはこうした憲法を保持し、培ってきた。だから、この65年間戦争しないでやってきたのです。

 といっても誰しも死にたくはありません。将来のある若者を死なせたくはない。だから、そういうことにならないように、外交努力はもちろん、ありとあらゆる努力をする、やり尽くすのです。平和を守るには並々ならぬ覚悟がいります。命がけでなくてはならない。それを実行するのが政治です。

 −−昨今の政治は力がなくなったようです。

 阿刀田 政治家の言葉が貧しくなっていますね。言葉の後ろに覚悟や信念がない。言葉は覚悟を伴わなければ、いい言葉になりません。消費税の問題にしても、いまちゃんとやらねば国家存亡の問題になると、本当に信じて、本当に考えて発言したなら、国民は聞き耳を立てるはずです。腰が引けた調子でやっているもんだから、ダメなんですよ。言葉は熟慮したうえで、覚悟をもって発してほしい。要は覚悟の問題なのです。

 −−ところで阿刀田さんはわが国の表現の自由度は5段階で3と指摘しています。

 阿刀田 最近の例でいえば、ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」の上映自粛です。内容に賛否両論のある映画とはいえ、一部の団体の抗議を受けて上映中止に至ったのは残念です。過去にも同様の抗議行動により、映画の上映や講演会が開けなかったケースがあります。自分の考えと異なる意見にも耳を傾け、発言する機会を保障できる社会でなくてはいけません。

 表現の自由に対する覚悟が薄い、民度がゆるいからだと思います。表現の自由がいかに大切であるかわかっていないのではないでしょうか。弊害的なことには、すぐ目がいくのですがね。表現の自由を、民衆がいかに大切にしているか、その意識の甘さにおいて日本は世界からあまり評価されていません。

 −−「環境と文学」を主題にした国際ペン東京大会が9月23日から早稲田大・大隈講堂などで開かれます。日本ペンクラブは「日本の環境文学100選」に原爆文学の井伏鱒二「黒い雨」を選びました。

 阿刀田 私たちは、表現の自由、平和の維持、環境の改善、文芸の発展の4本柱を目標に掲げて活動しています。東京大会では自然環境をとりあげますが、原爆は顕著な自然破壊です。「黒い雨」は市民の生活を描きながら原爆の被害を訴えています。井上ひさしさんの戯曲「父と暮らせば」もそうですが、原爆を日常の感情で描いた文学作品は味わいが深いですね。

 −−最後に、この国を担う世代にメッセージを。

 阿刀田 もともと貧乏な国でしたから、日本人は資源を使わずに、どうしたら心が豊かになるかを考えるくせをもっています。俳句や茶道にみられるように日本文化はシンプルなのです。今一度、おカネをむやみやたらと使わずに、抑制のきいた生活に戻るべきでしょう。人間は理性を持たないとダメです。(専門編集委員)

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 ■人物略歴

 ◇あとうだ・たかし
 1935年東京生まれ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館勤務を経て作家に。79年に「来訪者」で日本推理作家協会賞、「ナポレオン狂」で直木賞を、95年に「新トロイア物語」で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。03年に紫綬褒章を受章、09年に旭日中綬章を受勲。07年から日本ペンクラブ会長を務める。近著の「闇彦」(新潮社)は国際ペン東京大会の記念として特別書き下ろし。

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きくに向かってふいています

 どえらい記事を見つけてしまった。
 なんて、分かりやすい!

 聞き手ーー軍備を持つ国から攻め込まれたらどうするのか、と必ず問われます。
 阿刀田ーー私の答えは決まっています。そのときは死ぬんです、とはっきり申し上げております。
 私は、人を殺すくらいならば、自分が死ぬ道を選びたい。特別な倫理ではなく、同じ倫理観の持ち主はきっといるはずです。だから私は命がけで平和を守り、それでも攻撃を受けたら、丸腰で死ぬんだと覚悟を決めています。攻められたら死ぬんです、という覚悟が憲法9条の精神だと思います。私たちはこうした憲法を保持し、培ってきた。だから、この65年間戦争しないでやってきたのです。


 そうか、日本はどんなことがあろうと絶対に戦争しない国なんです。戦争をしないためにありとあやゆる手を尽くす国なんです。そして、万策尽き、攻められた時はみんな死ぬ国なんです。
 いざとなったらこわくてこわくて、そんな覚悟は決められないだろうが、そういう国であるということは世界中に広めて行きたい。

 

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