パオパオだより

2020年05月01日(金)

「苦海浄土」 [書評]

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◎NHK 「100分で名著」より

 国などの救済対象となった被害者だけでもおよそ5万人にも及び、世界に例をみないほど大規模な公害問題を引き起こした水俣病。その被害者である漁民たちの運動や患者たちの苦悩・希望を克明に描ききった一冊の本があります。「苦海浄土」。1950〜60年代の日本の公害問題を知る上での原点ともいうべき本であるとともに、そこに込められた深い問いやメッセージの普遍性から「20世紀の世界文学」という評価も受けている名著です。「100分de名著」では、水俣病公式確認から60年の節目を迎える今年、「苦海浄土」に新たな光を当て、現代の私たちに通じるメッセージを読み解いていきます。

 著者の石牟礼道子(1927-)はもともと一介の主婦でした。しかし自らの故郷を襲った惨禍に出会い、やむにやまれない気持ちから水俣病患者からの聞き書きを開始、「苦海浄土」を書き始めます。以来、水俣病患者や彼らにかかわる人々に寄り添い続け、全三部完結まで足かけ四十年以上、原稿用紙にして二千二百枚を越える文章を書き継ぎました。第一部が出版された1969年の日本は高度経済成長の只中。いわば経済発展の犠牲者ともいえる水俣病患者たちは、まだメディアで断片的にしか伝えられることはなく、その全貌はほとんど知られていませんでした。そんな中での「苦海浄土」出版は、経済成長に酔いしれる日本人たちに大きな衝撃を与えたのです。

 この書は単に公害病である「水俣病」を告発するだけにとどまりません。「苦海浄土」に描かれた人々の生き方からは、「極限状況にあっても輝きを失わない人間の尊厳」「苦しみや悲しみの底にあってなお朽ちない希望」が浮かび上がってくます。さらには、公害を生んだ近代文明の根底的な批判や、そうした近代の病を無意識裡に支えてきた私たち一人一人の「罪」についても鋭く抉り出します。この本は、単なる公害告発の書ではなく、文明論的な洞察がなされた著作でもあるのです。

 番組では、批評家・若松英輔さんを講師に招き、新しい視点から「苦海浄土」を解説。そこに込められた「人間の尊厳」「近代文明批判」「歴史観と生命観」「罪とゆるし」など現代に通じるテーマを読み解くとともに、想像を絶する惨禍に見舞われたとき、人はどう再生し、生きていくことができるかを学んでいきます。

■石牟礼道子
 熊本県天草郡河浦町(現・天草市)出身。水俣実務学校(現 熊本県立水俣高等学校)卒業後、代用教員、主婦を経て1958年谷川雁の「サークル村」に参加、詩歌を中心に文学活動を開始。1956年短歌研究五十首詠(後の短歌研究新人賞)に入選。
 代表作『苦海浄土 わが水俣病』は、文明の病としての水俣病を鎮魂の文学として描き出した作品として絶賛された。同作で第1回大宅壮一ノンフィクション賞を与えられたが、受賞を辞退。
 1993年、週刊金曜日の創刊に参画。編集委員を務めたが「手伝いをしただけ」である事を理由に2年で辞任している。
 2002年7月、新作能「不知火」を発表。同年東京上演、2003年熊本上演、2004年8月には水俣上演が行われた。
1986年5月には穴井太(俳人・故人)の世話により句集「天」(天籟俳句会)を刊行。
 代表句「祈るべき天とおもえど天の病む」「死におくれ死におくれして彼岸花」がある。2018年2月10日午前3時14分、パーキンソン病による急性増悪のため、熊本市の介護施設で死去。90歳没
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◎メディカルノートより

 「水俣病」

■概要
 水俣病とは、熊本県八代海沿岸及び新潟県阿賀野川流域において発生した公害病のひとつです。高度経済成長にあった日本で発生し、1956年5月に公式発見されました。第二水俣病、四日市喘息、イタイイタイ病と並び日本における4大公害病のひとつに数えられます。
 水俣病は、メチル水銀が工場排水に混じって環境中に排泄され、これらを多く取り込んだ魚や貝をヒトが摂取したことで発生しました。しかし、メチル水銀が原因だと判明し、環境に配慮した対策がとられたのは1968年のことで、多くの方が水俣病に罹患する事態となりました。
 メチル水銀の排泄に関して整備が行われて以降、発生の大元になった水俣湾流域を含め、2018年現在の日本においては基準値を超えるメチル水銀は確認されていません。

■原因
 メチル水銀はビニールの原料であるアセトアルデヒドをつくる過程で発生しますが、高度経済成長期の日本においては、このような物質への対策が遅れており、環境中に多く排泄されることになりました。
 海水中に排泄されたメチル水銀は、魚や貝、エビなどの魚介類の中で食物連鎖を介して蓄積されます。その後、メチル水銀を体内に蓄えた魚介類を人が食べ物として摂取すると体内でメチル水銀が蓄積することになり、水俣病が発症します。
 体内に取り込まれたメチル水銀は、毛髪を通して徐々に体外に排泄されますが、多くは神経を障害し、治すことのできない神経症状をもたらすようになります。水俣病は遺伝することやうつることはありません。ただし、妊娠中の母親がメチル水銀を摂取することで胎盤を介して胎児にもうつることがあります。

■症状
 メチル水銀が、特定の神経に障害をもたらす結果、さまざまな神経症状が現れます。主に、感覚や運動、体幹のバランス、視覚・聴覚に関係する部位が障害を受けます。具体的には、感覚障害として手足にじんじんとするしびれを感じたり、触られた感じや痛み・熱などを感じにくくなったりします。
 運動障害としては真っすぐ歩けない、ボタンをかけることができない、日常動作がぎこちなくなる、などがあります。また、言葉が不明瞭になったり、相手のいっていることが聞こえにくくなったりします。視覚に対する影響として、視野が狭くなることも特徴的な症状のひとつです。
 症状の出方には個人差があり、感覚障害を認めるだけの方もいれば、複数の症状が重なって生じることもあります。重篤な場合には、亡くなる方もいます。

■検査・診断
神経学的には、水俣病で出現しうる口周囲の触覚や痛覚の感覚障害、舌の二点識別覚の障害、求心性視野障害などを確認します。
また、指定された期間、特定の地域に居住し、メチル水銀に対しての暴露を受けたことを証明することも必要です。赤ちゃん筆などの毛髪や臍帯(さいたい:へその緒)などを用いて、当時をさかのぼる形でメチル水銀を測定することもあります。

■治療
 水俣病で障害を受けた神経障害は治療できません。そのため、治療の基本は神経機能を回復させたり残存機能を最大限発揮させたりするためのリハビリテーションや作業療法が中心になります。けいれんや不随意運動がある際には、症状緩和のための薬物が対症療法的に使用されます。
 また、急性期には体内のメチル水銀の排泄を促進するためのキレート剤使用や透析などが行われますが、一度起きた神経障害に対しての効果は乏しいです。
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 久々の書評。
 他人の読んだ本に、人は興味がない。最近やっとそのことが分かった。
 映画も同じ。他人が感動した映画など、どうでもいい。
 だから、このブログの「書評」「映画」カテゴリーがおざなりになった。
 けっこういい本を読み、いい映画を見たんですけどね。それはあくまで「私にとって」のこと。ほかの人にとっては、「ああ、しょもなー」という程度のものですよね。

 今回の「苦海浄土」。
 ずっと前から呼んでみたいと思っていたもの。コロナのおかげでじっくりと読む時間ができた。本文だけで354ページ。あとがきや解説を含めると411ページ。飽き性で読書中に幽体離脱してしまう私にとっては高い高い壁だった。でも、一気に読めました。メーデーである今日5月1日に読了できてよかった。

 1954年に最初の症状が現れ、1956年に公式発見となった水俣病。1955年生まれの私にとっては、決して他人事ではない。
 「森永ヒ素ミルク事件」はピッタリ1955年だし、このころが公害のはしりの時期だったようだ。

 半分くらいまで読んだとき、ヨメさんに言った。
 「苦海浄土は、恐山の、ほれ、なんやったかいな・・・。」
 「イタコか。」
 「それそれ。石牟礼道子さんは、水俣病患者に乗り移ってイタコとなって小説を書かはったんやわ。そやし、第1回大宅壮一ノンフィクション賞を辞退しやはったんや。ノンフィクションとちゃうし。」

 しかし、「イタコはフィクション」と自覚してはるとこがすごいと言えばすごい。
 これぞ、真の小説家かも。

 水俣市はチッソ工場と共に発展した街である。チッソ工場に勤められた人は「会社いき」と呼ばれ、生涯安泰を保障されたようなものだったらしい。
 そこにあらわになった水俣病患者。その人たちに向かって「会社をつぶす気か」と多くの人たちが圧力をかけたそうだ。その中でも、チッソ第2労組(いわゆる御用組合)が果たした役割は大きい。会社や政府は、被害者を分断することに力を注いでいた。

 ん?
 どこかで聞いたことがあると思ったら、「原発」、「米軍基地」。
 65年たってもいっしょやん。
 今の「原発」「米軍基地」の問題を考える上でも、この「苦海浄土」は読む価値があると思う。

 長らく読みたいと思っていたのに読まなかった「苦海浄土」。なぜ今ごろ読むことに踏み切れたかと言うと、私の好きな伊藤比呂美さんが石牟礼道子さんを絶賛されていたから。

 今日伊藤比呂美さんのツイッターを見てみると、「正義で人をぶん殴る気持ちよさを自覚してないイカれたフェミニストはみんな富岡多恵子を読め、頼むから富岡多恵子を読め」というのをリツイートしておられた。
 うれしいねえ。私の大好きな富岡多恵子も絶賛されているみたい。好きな人がつながっていくのを見るのは快い。

 富岡多恵子は「逆髪」以来ご無沙汰しているので、また読もうっと。
 あっ、「苦海浄土」の続編と言われる「神々の村」、「天の魚」も読まなければ。
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【追加】これだけは書いとかなあかん。

1959年12月30日、チッソと水俣病患者の間で、見舞金契約が結ばれた。その趣旨は
(1)チッソは、水俣工場からの排水が水俣病の原因とは考えていない。
(2)将来、水俣工場の排水が原因と分かっても、チッソに何も要求しない。
(3)死亡者に30万円、生存者に10万円(未成年者は3万円)を、見舞金として支給する。
(4)翌年以降、生存者には毎年10万円(未成年者は3万円)を年金として支払う。
(5)年金受給者が死亡した場合、弔霊金及び葬祭料を一時金として支払い、死亡の月を以って年金の交付を打ち切る。

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【RUN】

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 右アキレスけんが痛い。
 走れる日はできるだけ10km以上を目指してきたのだが、今日は無理せず5km。東北部クリーンセンター往復。

 ヘロヘロでしたー、31分12秒。
 早く治さないと。

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【今日のきく】

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 きくのおめめがパッチリ。
 ヨメさんがいろいろとしてくれたおかげで、細目しか開けられなかったきくの目がまん丸に開くようになった。

 「うれしい!」

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