パオパオだより

2020年03月11日(水)

柱をかじって生きる [時事]

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半杭一成さんが肌身離さず持ち歩いている、根本が深く削れた牛舎の柱の写真

◎京都新聞3月11日朝刊

   東日本大震災9年 福島・南相馬
             「置き去りの牛は柱を食べた」

 福島県南相馬市の元牧場主 半杭一成さん(70)には、東京電力福島第1原発事故後に肌身離さず持ち歩くようになった写真がある。根元が深く削れた、牛舎の柱を写した1枚。避難に伴い、牧場に置き去りにした乳牛が空腹に耐えかね、食べようとかみついた跡だ。「自分への戒め」と悔やむ半杭さんは、牛舎を保存し、訪れる人に無念さを語り継いでいる。


 原発の北西20キロ、牧場は同市の山裾にあった。東日本大震災から9年の節目を前にした10日、半杭さんは牧場跡地に隣接する自宅で「9年は早かった。でも、今も『牛には悪かったな』って思うんだ」とつぶやいた。

 原子炉建屋の水素爆発を受け、避難を決めたのは2011年3月16日。牧場に震災被害はなかったため、当初は深刻に考えておらず「1週間で戻るつもりだった」。

 乳牛は餌を多く与えると乳が張り、すぐ乳房炎になる。「腹をすかせるより、乳が痛くなる方がかわいそうだ」と餌は増やさなかった。近所に迷惑はかけまいと、40頭の牛は牛舎につないだまま離れた。

 しかし、原発の状況は好転せず、楽観的な見通しは1週間もしないうちに消える。「その後は『牛はどうしただろうか』とばかり考えていた」

 初めて帰ったのは1カ月後の4月20日。牛がどんな状況になったか、もう想像できていた。「牛たちに合わせる顔がない」と早朝、真っ暗なうちに自宅へ。かすかな鳴き声が漏れ聞こえる牛舎の扉は開けられなかった。罪深さから荷物だけ取り、逃げるように避難先に戻った。

 全頭を失った半杭さんが、牛舎を支える何本もの角柱の異変に気付いたのは、埋葬のために牛を動かした8月だ。つながれた牛の口でも届いた下側だけ、全ての角が取れ、細くえぐられていた。意味はすぐ悟った。

 60歳を超えた身で、数千万円の再建は用意できず、半杭さんは牧場を閉じた。代わりに建てたのが「無念」と刻んだ慰霊碑だ。「経済動物だけど家族でもあった。私が死んでも碑は事故の被害を伝えてくれる」と話す。

 原発事故が動物にもたらした被害を知ってもらいたいと、4年前に自宅へ帰還したのを契機につらい体験を語り始めた。「牛飼いだから命の大切さを知っていたのに。その自分が餓死させてしまった」。自身と牛の無念を通じ、事故への憤りを伝えていく覚悟だ。
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 「人間の飢え」もつらいが、「動物の飢え」はもっとつらい。
 この記事を読み、乳牛たちが柱をかじっている場面を想像したら体が固まってしまった。「それはないやろ!」

 昨日、人間の死についてヨメさんと小さな論争になった。
 「最後の晩餐がどうのこうのと言ってる人がいたし、そんなもんないって言っといた。人間の死は、たいていが即死か枯れ死やし。うまいもん食うて、そのあとすぐ死んだ人なんか見たことないわ。」
 「今はそんなことないねんで」とヨメさんは言う。
 「そらそういう取り組みをしてはる病院もあるって聞いたことあるけど、極々一部の話やろ。」
 「そんなことないって。」

 私の祖母は52年前、枯れるようにして死んだ。
 私の母は28年前、枯れるようにして死んだ。
 私の父は一月半前、枯れるようにして死んだ。
 私が臨終の場に立ち会ったのはこの三人だけだが(父は間に合わなかった)、三人ともうまいものを食べ終えて死んだわけではなかった。

 食べ物の味がわかるうちにおいしいものを食べ、そのあと次第に意識が遠のいて死ねたら、そら幸せやろう。でも、それはぜいたくすぎる。

 仕方なく置き去りにされ、柱をかじっていた乳牛のことを考えると泣けてくる。
 「飢え死にはつらすぎる!」

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【今日の大家志津香】

 父からのLINE。

 なぜか。

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     ◇     ◇     ◇ 

 かわいいおとうさんやねー。

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