2009年12月03日(木)
「めげるって!」 -兵庫・ゆめさき舎にて- [私の好きな人]
昨日、「ゆめさき舎」に行ってきた。(「ゆめさき舎」は、「ランナーズ9の会」のまっちゃんが経営されている小規模作業所です。)
10月14日以来、二度目。
今回の訪問の主な目的は、前回の帰りがけ「あした、また来るん?」と言ってくれた友へのこたえです。「あしたは来れへんけど、絶対また来るし!」
約束が果たせて、よかった。
前回は、お昼に到着し4時ごろまでおじゃました。今回は朝の風景も見てみたかったので、早起きして9時半到着目標で自宅を出発した。
平日は宝塚トンネル前の渋滞もほとんどなく、思ったより早く行けそうだった。その分SAでゆっくり休けいし、福崎ICを降りたのが9時10分過ぎ。これは私が先に到着し、まっちゃんの車の到着をお迎えできるなあと思った。
ところがIC出口あたりでモタモタし、「ゆめさき舎」到着はちょうど9時半。
ガレージに入ろうとしたら、反対車線にあのボロボロハイエースの姿が・・・。まったくの同時入着でした。
ハイエースからは、よくおしゃべりしてくれるSA君が降りてきて、むこうから「よっ!」って感じかな。
そのあと、前に「あした、また来るん?」と言ってくれたMI君や、紅一点のKOさん、電話帳大好きのTA君と次々に降りてきた。MA君は、おかあさんが連れてこられるようだ。
前回、もう一人いたFU君は、おうちの都合により別の施設に入所したらしい。こないだは彼とはまったく関わりを持てなかったので、残念。
写真を撮る時、ちゃんといいポーズとってくれてたもんね。もうちょっとだけでもなかよくなりたかったなあ。
前回初めておじゃました時は、正直言って、めちゃくちゃ緊張した。一番心配だったのは、「いやがられたらどうしよう」ということ。
恥ずかしながら、若かりし日、小学校教師を12年もしていたのに「知的障害者」といわれる人々のことをまったく知らなかった。イメージとして、「奇声を上げる」、「奇異な行動をとる」という部分ばかりが私の頭の中にあった。
それに加えて、まっちゃんがどこかに書かれていた「自傷行為」。こっちに向かって攻撃してくるならそれなりの対処ができるが、自分の体を傷つけている者を見つけたらどうしたらいいんやろう。
「えーい、なにもかもよう分からんわい。とりあえず、まっちゃんに甘えて、飛び込ませてもらおう。」
そう思ったのが、正解だった。
「ゆめさき舎」の通所者6人中3人は、私がいる間ずっとニコニコしてくれていた。あとの3人も、決して私を排除するような行動には出なかった。もう、それで十分ですね。おまけに、「あした、また来るん?」て泣かせるようなことを言ってくれる子もいて・・・。
あれこれ心配してても、何にも始まらんわな。
ほんま、よう分かりました。
この日は、みんながやっている仕事も体験させてもらった。
「ビスをプラスチックの型にはめて、ハンマーでトントン」と、「ビニールをおんなじ長さにチョッキンチョッキン」・・・て、何のことか分かりませんよねえ。写真とっておけばよかった。
どっちの仕事も、商品を納品に行くガソリン代などを考えると利益はほとんどなしらしい。厳しいです。
さて、今日のテーマは「めげる」。
これは、「がっくりくる」の「めげる」ではありません。兵庫県姫路近辺では・・・。
今回、お昼はお弁当ではなく、みんなで焼きうどん。大型ホットプレートで8人分を作った。
「指切らんように、気つけや」とか、私はやったこともないくせにえらそうに指導。
これにプラス、まっちゃん特製おにぎりと特製味噌汁。めっちゃうまかった。
カレーしか食べないと言われていたMI君も、めずらしく焼きうどんをパクパク。みんなでワイワイ言いながら食べたら、何でもうまいんや。
MI君は、口いっぱいにおにぎりをほおばり、半分がポロリ。向かいに座っていた私のほうに転がったようだが、気にしていなかった。
食べ終わり、「さてと」と片付けに立ち上がるとスリッパがニチャニチャ。
こらおもろい。こんなこと、久しぶりじゃわい。前は、しょっちゅうあったような・・・。なにか、なつかしい感覚・・・。
おなかがいっぱいになって調子がよくなってきたのか、MI君が活動的になってきた。
部屋を走り回りながら、MI君が言う。
「ゆかをどんどんしたら、めげる。」
「ドアをどんどんしたら、めげる。」
「ホットプレートをどんどんしたら、めげる。」
「MI君て、ほんまにめげるって!」と私。
「めげる」とは、姫路近辺では「こわれる」という意味だそうです。
MA君は、キーボード演奏を披露してくれた。
このキーボードもだいぶめげかけてたなあ。
本人もちょっと調子が悪かったみたいで、いつもはもっとうまく弾いてくれるらしい。
MA君は、まっちゃんに対して「あ・り・が・と」を連発していた。
「ありがとうってゆってもらうようなこと、何もしてへんにゃけどなあ・・・」とまっちゃん。
まっちゃんの手をとって自分の手と合わせ、指と指を組み合わせる動作を何回もくり返していた。きっと、何かを伝えたかったんやろうね。
まゆ毛ボーボーのTA君は、ジグソーパズルを一生懸命やっていた。
前に来た時は笑顔がまったく見られなかったのだが、今回は時々ニコニコしてくれていた。私には、私のほうを見てニコニコしてくれていたように見えたのだが、どうなんやろう。
SA君とは、今回もせんどしゃべったな。
カレンダーのカタログにヘキサゴンファミリーがぎょうさん載ってて、この話題だけで1時間はしゃべったね。SA君はテレビっ子みたいで、テレビおじさんの私とは話が合う。
私がスザンヌの舞台あいさつを見に行った話には、かなり食いついてきた。
でも、「ボクは上地雄輔に似てるから・・・」と言ったのにはまいったなあ。うーん、よう見たら、似てへんこともないか。
(オレンジのキャップがSA君です。)
紅一点のKOさんは、けっこうお茶目なことが分かった。
MI君がホットプレートにフライ返しを当てて音を出しているのを見て、「私にもやらせてー」とねだったり。MA君がキーボードを弾いていたのを見て、みんながいなくなったのを見計らってこっそりさわったり。SA君が一生懸命見ていたカレンダーのカタログを横からスーと取って行ったり。
それらをみんなニコニコ顔でやってるからおもしろい。しかられることを予想して、わざとやってるね、あの笑顔は。
ビニールチョッキンチョッキンをさせてもらったその部屋は、南側にガラス戸がありぽかぽかしていた。気がつくと、私とここの通所者5人がその部屋にそろっていた。
私とSA君はカレンダーのカタログを見ながらおしゃべり。その様子をうかがいながらも、ほかのことも気になるKOさん。その横でピースが半分くらいしかそろっていないジグソーパズルに打ち込むTA君。その後ろでデーンと寝転んでいるMA君。MI君はあちこちめげさしたり(こわしたり)、私の持ち物を一個一個点検したり・・・。
ああー、ええなー、このバラバラぶり。
ひとに指図されるのが大嫌いな私は、こんな風景を見るとゾクゾクする。やりたいことやらせてもらえたら、それが一番。
ただ、それを見守るほう(まっちゃん)はたいへんや。
「ゆめさき舎」特製寅の絵馬。
読売新聞でも記事にしていただいたそうだが、まだたくさんあるらしい。
私もちょっとだけいただいた。
家に持って帰ってヨメさんに見せると、「縁起もんやし、うちのお客さんにもあげたら喜んでくれはるんとちゃうかなあ」。
おお、グッドアイデア。
もし売れ残る不安があるようでしたら、ぜひうちに言ってください。できる範囲で、購入させていただきます。
今日、一つ賢くなったこと。
自閉症の人は、あらゆる外部の音を拾ってしまう人が多いらしい。自分が聞きたい音も聞きたくない音も同じレベルで耳から入ってくる。そのため、それらすべてをシャットダウンしてしまう。そこから、内へ内へと入り込んで行ってしまう。それは、きついね。
まっちゃんが私に言った。
「この仕事を長くしていると、普通にコミュニケーションがとれないというのが当たり前になってしまって、藤井さんのいっぱい話している姿に感心しました。」
なーんも。
私はたまに来て、自分の興味のあるところを見ているだけ。毎日毎日反応の少ない相手に奮闘されているまっちゃんとは、比べるのも失礼です。ただ、何か一つでも聞き取れたらいいと思いながら聞いているのは確かです。
次におじゃまするときは、難関のMA君の笑顔が見てみたいなあ。
Posted by パオパオ トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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