パオパオだより

2009年07月08日(水)

ともちゃん [学校]

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ようじろう君(6月16日生まれ)

 「こんにちはー、ふじいですー。」
 「あっ、せんせい。・・・わたし?」(おー、なつかし。ともちゃんのいぶかしげな顔。)
 「私や私。私の子、見にきてん。」

 昨日、あーちゃんのお母さんから教えてもらった。
 「ともちゃん、二人目産まはったんよー。今、おうち帰ってはるえー。見に行ったげてー。」
 今日、ちょうど真樹の中学校に用事があったので、お祝いを持っておじゃますることにした。

 中学校の真向かいのともちゃんの実家には、ともちゃんとご両親、2歳のお兄ちゃん(そういちろう君)とスヤスヤ眠っているあかちゃん。「まあ、ちっちゃくてかわいいこと。」
 ちっちゃいように思ったが、出産時3200gを超えていたそうだ。こんな近くであかちゃんを見ることはめったにないので、大きい小さいがよく分かっていない。

 それにしても、どうしてあかちゃんの顔を見ていると心が落ち着くのだろう。時々、「きゅーきゅー」、「ぶひーぶひー」。これもかわいい。そうや、みんなにかわいがってもらうために生まれてきたんやね。

 「先生、全然変わってはらへんねえ。」
 「いやー、髪の毛がうすーなってしもて、今日みたいな雨の日は頭ぬれんようにせんとえらいことに・・・。」
 「でも、若いかっこうしてはる。」
 「あっ、この服な、父の日に廉にこうてもうてん。」
 「廉君 ! なつかしい。廉君の『清廉潔白』の廉というのがずっと頭の中に残っててね、自分の子の名前にも入れたいなあってずっと思ってたんですよ。いろいろ相談して、こういう名前になりましたけど・・・。」

 うー、「泣けてくるやろー!」

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 「ともちゃん、30?、31?」
 「えー、私ですかー。12月の誕生日がきたら31です。」
 ともちゃんは、私の最後の教え子の一人。18年前小学校を卒業したのだから、それで勘定あってます。

 私はええかげんな小学校教師だったが、ひとつだけ心がけていたことがある。それは、「よけいなことをしないこと」。自分がよかれと思ってやっていることが、実は子どもたちのためになっていないことがよくある。それどころか、逆効果で迷惑な場合もある。一番大切なのは、<必要に応じて> いつでも動ける体制を維持し続けること。これが分かるのに、10年ほどかかった。(やっと分かったころに、退職してしまったわけですが・・・。)

 その点、最後に担任させていただいた「ともちゃん」を含む3人は、言うことなし。3人が3人とも個性あふれるよい子で、卒業までの1年間「いらんこと言ったりさせたり、せんとこー」とだけ思っていた。
 私が何もしなかったおかげ(?)で、いまやこの3人は立派な大人に。ともちゃんなんか、2人も子どもを産んで・・・。こんなうれしいことはない。 

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 「どっかから聞いてはるとは思うけど・・・。今ね、うちの真樹、ここの中学校にお世話になってんねん。」
 「えー、新しく女の子が入ってきたことは知ってたけど、藤井さんて、先生とこの娘さんやったんですかー。花背の藤井さんて多いから、先生とつながりませんでした。」
 「真樹はボクに似んとかわいいからなー。分からんかったか。」
 「真樹ちゃん、お母さんに似てはるねえ。」と、ともちゃんのお母さん。
 「ボクのええかげんなとこ似てくれたらよかったんですけど、けっこうまじめで息切れしたみたいです。」

 「私もね、高校入った次の日に熱が出て1週間休んだんですよ。その後も中間に熱が出て、そのときも1週間ほど休みました。自覚はなかったんやけど、小さい学校から大きいところに入ったギャップが原因やったんでしょうね。」
 「そうか、ともちゃんもそんな経験してんにゃ。もし今度うちの子におうたら、そんな話したって。」
 「先生はつらいこととかなかったんですか。」
 「なーんも。何でも味わうタイプやから。何でも楽しめとまでは言わんけど、つらいこともよう味わってほしいな。」
 「それは、ちょっとむずかしいでしょう。実は、先生も意外と繊細やったりして・・・。」

 ともちゃん、なかなか言うやんけー。
 間スポッと抜けとるから、こっちはいつまでも小6の子を見ている感覚やけど、30歳やもんね。しっかりしとるがなー。

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 お昼ごはんどきにおじゃましたので、おにいちゃん・そういちろう君はサラダ作りの真っ最中。
 「ブログ用におにいちゃんの写真とっとくわー。はい、グルグル回してー。顔はこっちむいてー。」

 この要求は、2歳の子にはかなりむずかしかったようだ。手をグルグル回したら顔は自然と手元に向くし、顔をカメラに向けたら手が止まってしまう。

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 ともちゃんのお母さんが、「先生のほうを向いてー」とおっしゃったので、「先生ゆうても分かりませんて。」
 すかさずともちゃんが、「おっちゃんのほう向いてー」。

 何回目かのチャレンジで、やっと成功。
 いい「調理師さん」の写真が撮れました。

 それにしても、つくづく、「ともちゃん、成長したなー」。

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 帰り際のともちゃんとの会話。
 「先生、毎年沖縄言ってはるんでしよう。私、奄美大島行きたいんです。」
 「そっかー。ほな、いっしょに行こ。」
 「いや、ほんまですか。行きましょ、行きましょ。」
 元担任と教え子の会話としてはへんかな。

 そして、小雨そぼ降る中、ともちゃんの実家を後にした。

 お向かいには、中学校の校舎。あと8ヶ月、どうかここで中学校生活をしっかり味わって。
 そう心の中で祈らずにはいられない。

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