パオパオだより

2012年08月24日(金)

ぬちがふう [時事]

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◎京都新聞8月18日朝刊・天眼より

   「ぬちがふう(命果報)」     瀬戸内寂聴

 ぬちがふう。チンプンカンプンのこの単語は、沖縄のことばで「命あらばこそ」「死なないでよかったね」という意味だとか。

 そういう題のついた映画のDVDがある日、突然、朴寿南(パクスナム)さんから送られてきた。寿南さんと私は50余年来の友人だが、会ったのは数回に満たない。彼女は日本で生まれ育った韓国人で、その出生の運命だけで、一方的におそいかかる理不尽で苦難の人生を歩まなければならなかった。彼女の名が世に知られたのは、高校生と23歳の女性が殺された小松川事件(1958年)で被告の韓国人李珍宇(イジス)とたびたび面会して往復書簡を交わし、それが出版されてベストセラーになってからだった。その「罪と死と愛と」という本を読んだ私が手紙を出したことから私たちの交際は始まった。李珍宇は後、絞首刑になった。当時の寿南さんは雨にぬれた白芙蓉のように嫋嫋とした美女だった。

 「子供の頃、ひどいいじめに苦しんで、もし魔女がいて日本人にしてくれるなら、声でも足でも何でもあげると思った」と告げられた時、思わず手をとって泣いてしまった。
 私が出家して寂庵を結んでから、突然元従軍慰安婦だったという韓国の女性を3人つれて訪ねてきた。すでに中年の寿南さんは別人のように太っていて頬もふくよかになっていた。元慰安婦たちは、こもごもに、日本軍に拉致され、慰安婦にされてしまった経緯をよどみなく語ってくれた。私は恥じ入りうなだれてあやまるしかなかった。

 76歳になっても美しく色っぽい寿南さんは、今や記録映画の監督になっていた。その映画は、大平洋戦争の沖縄戦で、島民と、強制動員された朝鮮人軍属が、日本軍の盾にされ、むごい犠牲を強いられた理不尽極まりない差別の実態を明らかにしていく。執念の証言者探しをし、70人にも及ぶ人の真実の声を寿南さん自身が聴き手になって、120時間にも及ぶ収録テープを回している。証言者たちは、寿南さんに向き合うと、魔法にかかったように素直になり、絶対死ぬまで秘し通そうとしてきたつらい経験や見聞のすべてを語りつづけてしまうのだった。聴き手の無限のやさしさと真摯さが語り手の心の扉を自然に開かせるのだろう。語り終わった人の顔は一様にほっとした明るさと和やかさに表情がやわらぐのは、観る者に言いようのない感動を呼びおこす。

 無理を重ねた寿南さんが、足元も弱く、目はほとんど見えなくなったという。娘の麻衣さんという杖がなければ、何の行動も不可能になっている。それでも華やかさの残る美しい顔を紅潮させ、これからも歴史の闇に光をあて嘘をあばいてゆくという。真実はこうして誰かの情熱と努力によって、必ずいつの日にか取り出され、この世に伝えられていくのだろう。ぬちがふう。命あればこそ、この映画にめぐりあえたということである。
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◎毎日新聞8月22日朝刊

   「慰安婦強制、証拠ない」
        橋下市長が持論を展開

 大阪市の橋下徹市長は21日、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸について「従軍慰安婦という日韓の課題が根っこにある」と指摘した上で、「慰安婦が軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられた証拠はない」と述べ、強制連行はなかったとの認識を示した。市役所で記者団に述べた。

 橋下市長は「韓国の言い分を全部否定しているわけではない」と前置きし、「証拠があったというのであれば韓国の皆さんに出してもらいたい」と述べた。

 また、尖閣諸島の問題にも絡め、「領土問題はしっかり国民の認識に落とし込む教育をしないといけない。一時的に火が付いたことで物事を進めたら危険な状態になる」と述べ、近現代史教育を充実させる必要があるとの持論を展開した。【茶谷亮】
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 戦争体験を語れる人が少なくなっている。終戦時に20歳だった人が今87歳。そのとき10歳の人でも77歳だ。中国戦線に4年送られていた私の父は、今年12月で91歳になる。
 「戦争体験を語れる人が、みんな亡くなるのを待っている人がある」と聞いたことがある。「証拠を出せ」と言う人は、そんな人たちの仲間だろうか。

 映画「ぬちがふう」、ぜひ見たい。橋下さん、いっしょに見に行きませんか。

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