2009年02月11日(水)
渡嘉敷島〜「おまけ」沖縄・2/8〜 [沖縄]
マラソン大会に出場するとき、ただ走るためだけに行くのはもったいない。できるだけ、その地方の人々としゃべりたいと思う。
渡嘉敷島は、夏はダイビング、冬はホエールウォッチングで有名なところだ。しかし、私にとっては「集団自決の島」という印象が強い。
大江健三郎「沖縄ノート」裁判も、この島に関しての記述について争われている。
戦時中、この島で起きた集団自決に日本軍の関与があったかどうか。岩波新書「沖縄ノート」には、実名は出されていないが隊長の関与があったとはっきり書かれている。それに対して当の隊長本人ともう一人の隊長の弟が、名誉棄損で訴えている。一審大江氏側勝訴で、確かもうすぐ二審の判決が下るはずだ。
この本全体を読んでもらえば、大江氏が特定の個人の名誉を貶めるために書いたわけではないことは明白である。
そのことについて調べている時、ビックリ仰天の事実を知った。
名誉棄損で訴えている原告が、その原本を読んでいないというのだ。曽野綾子さんが書かれた「ある神話の風景」(大江健三郎「沖縄ノート」を批判した書)の中の引用部分のみを読んで裁判に踏み切ったとのこと。
私から見ると、こっちの方が大江氏に対する名誉棄損のような気がするが・・・。
とにかくその地に行ってみたい。
「今、何の力もないあなた一人がそこを訪れて、いったい何の意味があるのか」と言われるかもしれない。しかし、私の経験上、動けば必ず何かを手に入れることができる。その場ですぐ手に入れることができなくても、必ずや後々思い出すことがある。「動かんかったらよかった」と後悔したことは過去に一度もない。
そう思いながら、その地に向かった。
「集団自決跡地」は、マラソン大会会場から北へ、急なダラダラ坂を上ったところにある。ここは、現在「国立沖縄青年の家」の施設になっている。
もちろん戦時中は、何もない断崖絶壁のジャングルであったのだろう。そこへ死を決意した住民が上ってきて、集結したのである。
この場所も、戦後の一時期米軍の施設としてに接収されており、「集団自決跡地」の石碑が建てられたのはかなりあとになってからである。
私たちがその石碑にたどり着いた時、現地ガイド役らしき方が親子連れに説明をされているところだった。
「そうか。大会要項のどこにも書いてなかったけど、この島ではこんな活動もしっかりやっておられるんや。」
下調べをする準備期間がなかったので分からなかったけれど、もし来年も来ることができたらぜひこのガイドをお願いしよう。
横で耳をそばだてていたら・・・。
「わたしの母は集団自決の生き残りです。でも、私はその話をまったく聞いたことがありませんでした。そりゃー、こんな悲しい話を自分の子どもにはしたくなかったんでしょうね。
母がそのことを初めて話してくれたのは、例の教科書から集団自決の記事が削除された時です。
本当にとんでもないことが起こりました。実際にあったことをなかったことにしようとするのですから。」
そして、そのガイドさんと親子連れは、実際に集団自決のあった現場である薮の中へと進んでいかれた。
私もこの人たちについていきたかったがやめておいた。きちんと申し込みをしてきちんと話をお聞きしよう。それは来年でも遅くない。そう思い、そこから引き返した。
実は、この「集団自決跡地」に行く前、林道の中腹で「アリラン慰霊のモニュメント」を偶然見つけた。ここは、どのガイドブックにも地図にも載っていなかった。
変わったお墓のような形が道路から見えたので目に留まったが、すっと通り過ぎてしまってもおかしくないようなところだった。
戦時中犠牲になった韓国朝鮮人の方々を慰霊するため、全国からの寄付金やバザーの収益金によって建立されたそうだ。
残念なことに、この場所は島一周の部のマラソンでも通らない。
「とかしき島一周マラソン」と言うからには、さきの「集団自決跡地」や、この「アリラン慰霊のモニュメント」も通るコースにしたらどうだろう。今よりさらにアップダウンのきついコースになってしまうが、渡嘉敷島がダイビングやホエールウォッチングだけの島でないことを分かってもらえるいい機会だと思う。
平和を求めることは、何も格好悪いことではない。そのスタートが、たいてい過去のあやまちを知ることからスタートするため、敬遠されることが多い。誰でも人の死に関わる話を聞くのは、楽しいことじゃないですからね。
でも何も知らず、同じあやまちをくり返すことだけはやめましょう。それは、誰も望んではいないはず。
ダイビングやホエールウォッチングが好きな人も、集団自決で家族にまで手をかけざるをえなかった人々の話や強制連行された韓国朝鮮の人々の話を聞く耳は持っていると思う。せめて、ガイドブックやマラソン大会の要項の片隅にでもその説明が書いてあったらいいのにと思う。
どうでしょうか。
この日は、前日渡嘉敷港の横の売店で買ったTシャツを着た。
「いつもまえむき・ときどきうしろむき」Tシャツ。
売店のおねえさん(?)は関西弁。話しかけてみると、「大阪生まれの沖縄育ち、もうこっちに来て25年」だそうだ。(ということは、うちのヨメさんとおんなじ歳くらい?)
買ったTシャツをさっそく着て、売店まで見てもらいに行ったら、たいそうよろこんでくださった。
富本晴美さん。
みなさんも渡嘉敷島に行かれたら、ぜひ港の横のお店「ChipChip」さんへ。富本晴美さんとお話ししてください。楽しい方ですよ。
最後に一緒に記念撮影。
「いつもまえむき・ときどきうしろむき」
これからも、これでいいですよね。
☆★☆今日(2/16)、現地ガイドボランティアについて、渡嘉敷島村役場に電話で問い合わせてみました。
役場では、そういった活動は行っていないとのこと。私が写真に撮らせてもらったジャンバーの方は、いったいどなただったんでしょう。マラソン大会のスタッフが着られていたのと同じジャンバーだったんですけど・・・。
お話の内容からも、渡嘉敷島の方にまちがいありません。
この記事を読まれた方であの男性をご存知の方は、ぜひお知らせください。
よろしくお願いします。
Posted by パオパオ トラックバック ( 0 ) コメント ( 2 )
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コメント
みきさん、コメントありがとうございます。
「3位では、ダメ!」優勝あるのみやったんですけど・・・。この結果、パオパオに対する真樹の評価は30点くらいかな。「くやしいです!」
ヨメさんに言わせると私は口だけの人間とのことなので、私の書いた文で「自分が恥ずかしい」なんて思わないでください。
ただ、沖縄は、今日本が抱えているすべての問題が凝縮されている場所であるような気がします。沖縄に学べば、必ず今の自分にかえって来ることがあります。
「見たいものしか見ない人間はダメ」と、いつも自分に言い聞かせています。一番いいのは、できるだけ現地の方としゃべることですね。
真樹ちゃん、入賞おめでとう!
パオパオさんも3位、大健闘じゃないですか。
今回の沖縄旅行はとっても収穫いっぱいの旅でしたね。
私も沖縄は大好きで、昔ダイビングをやっていたのでよく潜りに行きました。
でも陸地についてはあまり詳しくなく、しかも沖縄の歴史もちゃんと勉強したことがなくて、渡嘉敷島のこともこの記事を読んで初めて知りました。
何も知らずに沖縄を知ってるような顔してた自分が恥ずかしい・・・
今度沖縄へ行く時は、もっと沖縄のいろんな所を見たいと思います。