パオパオだより

2008年04月19日(土)

「月のまぴろーま」 [演劇]

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劇団文化座公演「月のまぴろーま」パンフレット

 このブログは、一応カテゴリー別に分けてある。
 今回は、「演劇」。(めずらし!)
 劇場に行ったのは、今まで一度だけ。たぶん25年くらい前。(京都会館)
 筒井康隆の「ジーザス・クライスト・トリックスター」。これはおもしろかった。聖書のパロデイで、「クリスチャン見たら、めちゃくちゃおこんでー」という内容だった。
 このサイクルでいくと、つぎに演劇を見るのは77歳。もう、死んどる。ということは、カテゴリーに分けるほどでもなかったか

 この「月のまぴろーま」も、羽根田さんのブログに紹介してなかったら、題材が鳩間島でなかったら、文化座の座長が佐々木愛さんでなかったら、東京まで見に行くことはなかっただろう。

 会場である俳優座劇場は、外から見るとこじんまりした感じだった。ひっそり落ち着いた気持ちで見られるのかな、と思いながら入ってビックリたくさんの花々。
 「へー」と思いながら客席へ向かうと、なんかへん。若い人がまったくいない。どう見ても60代、いや70代のほうが多いかも。
 「鳩間行ったことある人は、この中に何人いやはるやろう?」
 私の席は、6列の2番。左端ではあったが、かなり前のいい席だった。

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入ってビックリすごい花々

 舞台が始まった。
 森口 豁「子乞い」の原作に忠実な出だしだった。
 鳩間の小学校から子どもがいなくなる。子どもがいなくなり、学校がなくなれば、島自体が消滅。それを防ぐために奔走する人々、また逆にその不自然な動きに反発する人。

 最初の問題は、生産組合の3人の仲間割れである。主にかぼちゃを作る生産組合の話は、原作にも書いてあった。
 舞台では、生産性にこだわる富永とのんびりしている他の2人との摩擦が大きくとりあげられていた。
 「この島の人間はだれも人に勝とうという努力をしない。だから、みんないやになって出て行くんだ。」というようなことを言っていた。
 のんびりした2人がトラクターをこわしてしまい、チヨおばあから借りた簡単な工具で修理しようとした場面があった。
 富永「なおったのか。」
 2人「それが・・・」
 富永「おまえら!いいかげんにしろ!」
 おばあ「なにー、今日はダメでもあしたはきっとなおるさー。」(もちろん、この役が佐々木愛さんです。)

 ここで、涙があふれてしょうがなかった。
 こう言ってもらえたら、救われる子どもが何人いるだろう。いや子どもだけでなく、大のおとなでも。
 ちょっと気になって客席を見てみたが、誰も泣いてるふうはない。ここ、ええ場面やと思うけどなあ。

 話ががぜんおもしろくなってきたのは、原作にはなかった詐欺師・稲村一也の存在だ。
 鳩間ではないが沖縄のどこかの島で、指名手配犯が長く暮らしていたというニュースを聞いたことがある。その話をヒントにされたのだろうか。

 実際、沖縄を食い物にしているヤマトンチューはいっぱいいる。しかしあの稲村のように、沖縄の人たちの心にふれ、自分の考えを変えていく人間はいったいどれくらいいるのだろう。
 だまされ裏切られ続けても、決して心のすさむことのない沖縄の人々。うまく演じられていた。

 最後の方に、チヨの夫・徹が言っていた。
 「この島には、勝ちも負けもない。あるのは、ひとりひとりを大事にする気持ちだ。」
 人間としての基本中の基本。これが今、忘れ去られようとしている。学校も、どうだろう?

 舞台が終わった時、「もう一回見たい」と思った。たった11日間の公演とは、もったいない。
 さすがプロの演劇はすごい。引き込まれた。
 小学校存続の話なのに、子どもは話題として出るだけだった。それが、全然不自然ではない。十分演技でカバーできていた。
 舞台は、宮里家(チヨ夫婦の家)の表と港へ続く道だけ。これで十分だった。
 小中学生が劇をする時、背景や小道具にこだわりすぎるのも考え物。それは、演技に自身がない証拠かも。

 自分が興味のあるテーマで、しっかりした劇団の公演なら見る価値あり。
 25年後と言わず、1年に1回くらいは見に行ってもいいかなあ。

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俳優座劇場

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